この記事をまとめると
■カーボンを規制する欧州委員会の「ELV指令」にクルマに使われるカーボン素材も含まれている
■ELV指令にカーボン素材が含まれたことで次世代自動車のさまざまな可能性が損なわれる危険性がある
■欧州委員会はカーボン素材の扱いについて修正案を出す可能性がある
リサイクルの方法がまだ確立されていないカーボン素材
最近、クルマでカーボンといえば「カーボンニュートラル」。そんなイメージがあるだろう。クルマが走行中に排出するCO2や、クルマを製造する際に発生するCO2を削減する一方で、森林保全など自然界でCO2を回収したり、またはCO2を地中に埋めるといった研究が進んでいるところだ。
そうした環境対策とは別に、リサイクルの観点でクルマの車体などで使うカーボン素材の使用を規制する動きが欧州にある。欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会による「ELV指令」に係る。
クルマのカーボンルーフ画像はこちら
ELVとは、自動車の設計時点から量産され、最終的に廃棄されるまでの「End-of-Life Vehicles」を指す。
具体的には、1台あたりのプラスチック使用量の25%以上を再生プラスチックにするなどだ。このELV指令のなかに、カーボン素材が含まれたことに対して、自動車産業界からは懸念の声が広まっていた。
一般的な乗用車では、カーボン素材は多用されていないが、スポーツカーの一部ではエアロパーツやルーフ、サスペンションの一部、またインテリアなどで使われることがある。さらに、いわゆるスーパーカーやハイパーカーといった超高額車になると、レーシングカーの技術を活用して車体をカーボンモノコック化する場合もある。クルマとしての走行性能を根本的に高めるには、もっとも有効な設計手法だと考えられている。
この分野は、東レなど日本企業も参入しており、その高い技術力がグローバルで認められているところだ。むろん、カーボン素材のリサイクルについても十分な研究開発を進めた上で、各社が量産化しているところだ。
東レ・カーボンマジックのカーボンモノコック画像はこちら
それにもかかわらず、欧州委員会のELV指令にカーボン素材が含まれたことに対して、自動車業界・自動車部品業界からは驚きの声が上がった。スーパーカーはもとより、次世代自動車におけるさまざまな可能性が損なわれる危険性もあるからだ。
ただし、一部報道では、欧州委員会はカーボン素材の扱いについて近く、修正案を出す可能性があると報じている。
結局、日本は欧州が主導するさまざまな環境規制に振りまわされるばかり。今後もさまざまな規制案が出ては修正され、なかには消えていくものもあるだろう。地球環境を真剣に考える姿勢は、日本も欧州も変わらないが、その背景には政治的な観点も含めてさまざまな思惑が入り交じっているように感じる。
これからも、欧州でのEVL指令について継続的にウォッチしていきたい。