いまのクルマはみんな付いてる! でも意外と知らない「サスペンション」の話 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■クルマの乗り心地に深く関与するサスペンションは馬車の時代から存在していた

■バネの動きを制御する「ショックアブソーバ」がサスペンションの進化の鍵であった

■航空機やレーシングカーが生んだサスペンション技術がいまでは市販車に受け継がれている

馬車の時代からサスペンションは存在していた

 荒れた路面を走っても、路面の凹凸を吸収して車両の姿勢を安定させ、乗員に不快感を与えないようにした車両のメカニズムがサスペンションだ。人を乗せて運ぶ乗り物にとって、とくに乗り心地は重要な要素であり、馬車の時代から考慮されてきた。車輪を支える車軸と人を乗せる車体をつなぐ位置に板バネを配し、路面からの入力を吸収することで乗り心地の改善を図るために考え出された装置で、これがサスペンションだ。

 このサスペンションの考え方は、自動車が考え出されてからより重要視されるようになった。承知のように、初期の自動車は走行速度も低く、サスペンションに対する要求性能のレベルはそれほど高いものではなかったが、20世紀初頭に勃発した第一次世界大戦(1914〜1918年)が自動車のメカニズムを急速に進化させ、それに伴う高速走行化がサスペンションの役割をより大きなものとしていた。

 車両の走行速度が高速化すると、当然ながらサスペンションにかかる負担も大きくなった。旋回Gや路面の凹凸に合わせて上下動する車輪の動きは高速化するが、バネには固有の振動が一定時間続くという特性があった。当時はリーフスプリング(板バネ)が主流だったが、現在一般的となっているコイルスプリングの動きを思い浮かべればわかりやすいと思う。力が加わり縮んだ(圧縮された)バネは、縮みきったところで今度は反対方向に伸びようとする動きをする。

 クルマにとっては、路面からの衝撃(入力)を受け、縮むことでその衝撃(力)を吸収するバネの働きは狙ったとおりのものだが、その力が解放される逆方向(伸び)の動きは安定した車両挙動にとってはありがたくない動きである。

 受けた路面入力を吸収するためバネが縮む。これは、サスペンションにスプリングを使う本来の狙いだ。しかし、縮んだスプリングが伸びようとする力は放っておけない。どうするか? このスプリングの伸び縮みに関わる動きを抑制しようとするため考えられた装置がショックアブソーバー、あるいはダンパーだ。

 余談だが、どちらも同じもので呼び名の違いだけと考えてよいが、ショックアブソーバー(衝撃吸収、減衰)という名称は、その働きからはスプリングを指すもので、ダンパー(振動減衰器)という名称のほうが、より正確な名称ではないか、という見方がある。


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