見た目はただのSクラスだけど「手榴弾」「毒ガス」だって耐え抜く! メルセデスの「S 680 ガード」がもはやスパイ映画のシロモノだった (1/2ページ)

この記事をまとめると

■世界でもっとも安全とされるクルマの1台がメルセデス・ベンツS 680 ガードだ

■10cm厚の防弾ガラスなどで防弾どころか防爆仕様で対ガス兵器にも対応

■60人の職人により50日をかけて生産されるS 680 ガードの価格は約7000万円

要人がメルセデス・ベンツを選ぶ理由がよくわかる

 第二次大戦前から、ヨーロッパの自動車メーカーは防弾仕様、高セキュリティ車両を作っています。とりわけ、メルセデス・ベンツはVIPといわれる顧客層が厚かったためか、専用の研究開発、そして製作部門を抱えているといいます。彼らのセキュリティ車両に対する知見、ならびに技術力は、いまや世界でも指折りといっていいでしょう。現在、世界でもっとも安全とされるクルマは、アメリカ大統領が乗る「ザ・ビースト」、またはメルセデス・ベンツS 680 ガード 4MATICといわれる所以です。

 ガードという別名がついたのはつい最近のことで、メルセデス・ベンツはことさらに防弾仕様車の宣伝はしていませんでした。何故なら、詳細なスペックを宣伝することで「弱点」まで晒してしまうことになりかねないから。つまり、「厚み〇〇cmの防弾ガラスを装備」と公表すれば、じゃあ徹甲弾を使おう、対物ライフルを用意しようなどと対策されてしまうわけです。

 が、S 680 ガード 4MATICはもろもろを公開どころか、世界の武器ショーみたいなステージでも堂々と宣伝しています。一説によると、「技術を公開したとてとうてい攻撃は成功しない」という自信があるのだとか。同車は、ドイツの防弾性能規格で最高レベルの「VR10」を認定されており、防弾どころか防爆性能、対ガス兵器にも対応という抜かりのなさ。ちょっとやそっとじゃ撃破できません、ということです。

 そんな赤裸々にされたセキュリティを見ていくと、まずは10cm厚の防弾ガラスに目を奪われるはず。防弾性能は十分ありそうですが、心配になるのはその重さ。いざというときに開閉がもたついては賊の手が窓から入ってきたり、手りゅう弾を投げ込まれてしまうかもしれません。が、基本パッケージは開閉機能を省いたウインドウとなっており、また開け閉めする場合は専用の油圧開閉装置、しかもかなりの高速で機能するオプションが用意されています。

 また、防弾仕様というとドアの中に5mm厚の鉄板を仕込んで……と思いがちですが、現在は強度と重量の観点からケブラー素材が使われているのだとか。さらに、ガス兵器への対策としてキャビンの気密性を保つ必要から、より加工のしやすい素材へとスイッチしたのだそうです。それでも、ドア1枚の重さは180kgに達するため、ノーマルとはまったく違うヒンジとキャッチが使われています。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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