この記事をまとめると
■ドイツのニュルブルクリンクは自動車メーカーが車両を鍛え上げるサーキットとして有名
■世界屈指の難コースのニュルではスポーツ走行時のヘルメット着用が義務化されていない
■多くの人にニュルを楽しんでもらいたいという姿勢の運営は自己責任を貫く
じつは死亡事故も起こっているニュルブルクリンク
自動車メーカーがハイパフォーマンスカーを鍛え上がる場として有名な、ドイツのニュルブルクリンクのノルトシュライフェ(北コース)。全長は20kmを越え、サーキットというよりはアップダウンがとても大きい山間部のヒルクライムといった作りだ。
そんなニュルブルクリンクを、日本人は「ニュル」と称して「いつかは愛車でニュルを攻めてみたい」と、ゲームの世界でニュルを楽しんでいる人もいるだろう。
ニュルブルクリンク北コースを走る車両画像はこちら
周知の通り、ニュルではいわゆるスポーツ走行が可能だ。自動車メーカーが単独で、または各社が共同で貸し切っている時間以外は、ユーザー向けに1周単位で有料利用できる場合がある。最近はスポーツ走行の様子をスマホや小型カメラを通じて車内から実況するユーザーも珍しくない。
そんなユーザーが走行中にヘルメット未着用だったり、夏場だと半袖だったりと軽装な場合があるので、日本人としてはそうした様子に驚くことだろう。日本でも全国のサーキットでスポーツ走行ができるが、走行する条件としてはヘルメット着用や長袖・長ズボンが義務付けれている場合がほとんどだ。
ヘルメットとレーシンググローブ画像はこちら
そのあたり、ニュルはいったいどうなっているのだろうか?
筆者は1980年代からこれまでさまざまな立場でニュルを定期的に訪れてきた。各種業務上の試験走行もあれば、個人的なスポーツ走行もある。また、ニュルの運営母体を取材したこともあり、運営責任者に詳しい話を聞いたことがある。
その際、よく出てきた言葉が「オウン・リスク(自己責任)」だ。運営サイドとしては、より多くの人にニュルの魅力を味わってもらおうという運営姿勢だ。そのため、スポーツ走行中に観光バスが走行していたり、またBMWなどが運営する同乗体験タクシーなどが混走する場合もある。四輪車もいれば、二輪車もいる(2025年から規定変更で四輪車・二輪車の混走廃止)。
ニュルブルクリンクの北コースを混走する2輪車と4輪車画像はこちら
そうしたなか、アップダウンの激しいブラインドコーナーで目の前にいきなりスロー走行するクルマや二輪車に出会すリスクがある。単独走行するだけでも大変なニュルで、こうした状況でのリスクは計り知れない。
実際、ニュルのスポーツ走行では死亡事故が何度も発生している。それでも、ニュルの運営サイドは「オウンリスクを理解した上で、ニュルを楽しんでほしい」という姿勢だ。そのため、走行中の服装についてもヘルメットや長袖などを推奨はしているものの、あくまでもオウンリスクによる参加者の判断に委ねられてきた。
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なお、冬場の降雪時期になると、ニュルではドイツやヨーロッパ各国のアルペンスキー選手の強化合宿などに活用されると、以前の取材の際にニュル運営サイドから聞いている。