官民一体でもっと普及させなきゃダメ! コストは高くても日本に必須の「災害支援車両」とは

この記事をまとめると

■豪雨や地震などの災害時に活躍してくれるのが災害支援車両だ

■災害支援車両は自治体や関連公共法人・事業者などが所有・管理するが経費負担は軽くない

■万一に備えて必要不可欠な車両のため官民一体となって普及を図ることが望まれている

災害大国の日本には配備が不可欠な災害支援車両

 異常気象による豪雨災害や頻発する地震といった自然災害のほか、広域火災や陥没事故などで対象地域のインフラに甚大な障害が発生したときに、地域住民を支援する目的で派遣される災害支援車両。近年活躍する姿を目にすることも増えているのだが、必ずしもこれが正式な名称というわけではない。

 もとになったのは、自衛隊や各地の消防本部がそれぞれの活動の後方支援を目的として配備していた車両である。これは、あくまで活動主体(自衛隊や消防隊)が使用するための車両。消防では、1995年の阪神淡路大震災を契機に必要性が認められるようになり、全国に配備が広がったとされる。

 阪神淡路大震災以降も、各地で大きな地震・集中豪雨・火山の噴火・台風などによる大規模な自然災害が続いている。とくに2011年の東日本大震災では、広範囲にわたって多くの被災者が長期間生活に困窮するといった事態を招いた。このとき、災害によって直接犠牲になるだけではなく、避難生活中の身体的・精神的負担が原因で犠牲になる人を防ごうと、支援車両が利用されるようになったのだ。

 こういった車両は主に自治体が保有・維持することから、2025年9月にUDトラックスが埼玉県・上尾市に2台の車両を寄贈した。車両は、バンタイプと平ボディタイプの2車種。バンタイプはおむつ替え・授乳・障碍者や高齢者の身体的ケアなどを想定しており、バン内にプライバシーが守れるふたつの個室が用意されている。

 さらに、ソーラー発電システム・ディーゼル発電機・リチウムイオン蓄電池といった、電源を確保する設備を搭載。エアコン・冷蔵庫・水タンク式シンクを備え、避難者の生活支援が行なえるようになっているのだ。

 平ボディは、テールゲートリフターやウインチを備えており、被災地現場における土嚢・被災家具などといった重量物運搬に活用する予定だという。

 こういった大型車両だけではなく、軽トラックを改造した災害支援車両も登場している。一般社団法人全国軽自動車協会連合会では、給水設備・発電機・支援物資を搭載できる車両を開発。また、大江車体特装でも同様の車両を製造している。災害現場では大型車両が通行できない場合もあり、軽トラック特有の小まわりのよさが求められることもあるのだ。

 このように、災害支援車両は多彩な機能をもつが、このほかにも医療支援・食事支援・トイレ支援・支援資材運搬など、さまざまな用途に合わせて製造される。ただ、特殊架装になることが多いので車両単価が高くなりがちだ。そのために、導入コストが相応に必要となってくる。さらに、維持・管理といったランニングコストも考えておかねばならないのだ。

 災害支援車両は、主に自治体・関連公共法人・事業者などが所有・管理しているが、前述のようにその経費負担は必ずしも軽くはない。そこで、内閣府の災害対応車両登録制度を利用し、必要に応じて国が補助をする試みが行われている。また、個人・公共団体・事業者が所有するキャンピングカーを、災害支援車両として活用しようという動きもあるのだ。

 使用頻度は高くないのかもしれないが、万一に備えて必要不可欠な車両なのであるから、官民一体となってその普及を図ることが望まれている。


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