この記事をまとめると
■新型キックスは受注開始から1カ月半で1万代以上の受注を受けた
■デザイン担当者に追求した点を直撃した
■さまざまな工夫とチャレンジを反映した日産らしい1台となっている
大ヒット中のキックスはどうやって生まれた?
6月17日に発表された新型キックスは、第3世代「e-POWER」など進化した走りや力強く躍動的とされるスタイルが好評で、8月上旬時点での受注は1万1千台を越えたといいます。そのなかで今回はスタイリングに注目し、開発の意図や特徴について、デザインをとりまとめた楠氏にお話を聞いてみました。
●グローバルで通用する本質的デザイン
──では始めに、新型の開発に当たって先代のデザインをどのように総括したかを教えてください。
「先代は2016年にブラジルで発売され、アジア地域を含め新興国をメインマーケットとして、アフォーダブルでありながらエナジェティックなスタイリングが特徴でした。ただ、新型は日本を含めよりグローバルに展開されるため、単にエナジェティックではない本質的な強さやプレミアムな質感が必要と考えました。ライバルが多いBセグのなかで埋没しないデザインですね。したがって、先代からの継承点はほぼなく、ゼロからのスタートだったといえます(グローバルデザイン本部 プログラムデザインダイレクター 楠 鉄平さん(以下同))」
日産自動車 グローバルデザイン本部 プログラムデザインダイレクター 楠 鉄平さん画像はこちら
──デザイン開発は海外スタジオも含めて行われたのでしょうか?
「はい。先行開発からアメリカ、ヨーロッパ、中国と日本(神奈川県厚木市)で展開しました。当初はよりモダンでタフな案が出され、先代からの改善やバランスがよくカッコいい案も出ていたものの、ひと目で『LOVE!WOW!』を感じるような衝撃が足りないと感じていました。開発に当たっては世界中のお客様の声やパッケージ、日産らしさなどさまざまな制約があるのですが、じつは優れたデザイナーほどそういった諸条件をすべて受け止めてしまい、優等生的な提案になってしまう傾向があるんですね」
日産キックスのデザインイメージ画像はこちら
──それは意外です! で、そこに出てきたのがアメフトのヘルメットをモチーフとした案ということでしょうか?
「そうですね。じつは先の4拠点と並行し、制約を一旦外したうえで、『本当はどんなクルマがほしいの?』『カッコいいと思っているの?』という別スタディーをアメリカスタジオに依頼していたのですが、そこで私たちがダークホース案と呼んでいるスケッチが出てきました。もともとはラリーカーからインスパイアされたものだったのですが、非常に魅力的で、『LOVE! WOW! という衝撃! 』を感じたんですね(笑)。そこで、その案を実際のパッケージに入れていったものが現在のキックスにつながるダークホース案になったワケです。ほかの拠点からすれば、最後の最後で突然衝撃的な案が追加されたので、相当ビックリしたと思います(笑)」
日産キックスのデザインイメージ画像はこちら
──なるほど。では各パートについて伺います。フロントについてはとにかく顔の大きさが印象的ですが、フロントエンドの絞り込みを減らしたのでしょうか?
「いえ、フードは高めにしていますが、プランビューで見ると絞り込み自体はむしろ強くなっています。ただ、フロント部のプランビューでの後退角の付け方を変えていて、ランプやグリルを分断せずひとつにまとめたんですね。アメリカでのBセグはかなり小さな部類に入りますから、やはり存在感が欲しい。また、そのままではオーバーハングが長く見えてしまうので、左右に縦のラインを入れることで視覚的にオーバーハングを短く見せ、スタンスのよさを感じるようにしているんです」
日産キックスのデザインイメージ画像はこちら
──では次にサイド面について。先代に比べ、新型のベルトラインやキャラクターラインは水平基調になっているのが特徴です。
「先代は、リヤに向けて大きくキックアップさせることでわかりやすいアクティブ感を出していましたが、新型はより本質的な塊の強さを目指しました。アメフトのヘルメットが機能を重視し必要なものだけでデザインされているように、ボディにカタマリの強さがあれば余計な装飾は不要なんですね。いわゆるブラシストローク的なラインではなく、新型はあくまでも立体をサポートするためのキャラクターラインなんです」
日産キックスのデザインイメージ画像はこちら