クルマの剛性感はボディの強さだけで決まらない。レーシングドライバーが語る剛性の真実【ボディ剛性編:後編】 (1/2ページ)

剛性の基本は縦曲げ・横曲げ・ねじりの3つ

 試乗リポートなどでは車体強度について触れられることはほとんどない。どんなに頑強なつくりでも設計値を超える重さの相手や、衝突速度によっては安全を担保できないからだ。

 一方、剛性はハンドリングや乗り味を語るうえで重要なポイントとなる。車体剛性には”縦曲げ剛性”、”横曲げ剛性”そして”ねじり剛性”がある。

 縦曲げ剛性は、車体の上下方向に力が加わった際の車体フロアの撓(たわ)みで感じ取れる。たとえば強いブレーキング。車体床面には強い縦曲げ応力が加わり、変形量が大きくなると後輪の接地が悪化して不安定な挙動を招く。

 横曲げ剛性は、コーナーでハンドルを切り込むと前輪にコーナリングフォースが発生し、車体の前部にコーナー内側へと向ける力が加わる。このとき車体床面の曲げ剛性が弱いと、後輪との位相が遅れて不安定な操縦性になるのだ。

 メーカーレベルの検証となるが、この横曲げ剛性試験として、後輪車軸をベンチに固定したうえで前輪に横方向の力を加え、車体の横ブレ量を測る方法がある。しかし、実際の計測値を数値データ化している例は少ないようだ。

 ねじり剛性は、コーナリングやワダチ路などで、車軸の前後に異なるロール方向の応力が発生した際、車体にはねじれる力が加わるが、それに対する変形のしにくさを示すものだ。

 縦曲げ剛性、横曲げ剛性、ねじり剛性のいずれも、ハンドリングに大きく影響するため、試乗で感じ取ることができる。ただし、ドライバーにはそれを数値化できないので、”剛性感”という言葉で表現するのである。

ボディだけではない剛性感に影響する部位

 走行中に剛性感を感じるのは車体だけではない。サスペンション剛性と、その取り付け点の剛性、エンジンやトランスミッション、クロスメンバーなどの取り付け点剛性、あるいはステアリングラックの取り付け点の剛性にも着目する必要がある。

 タイヤの場合は、その骨格(ケーシング)や接地面(トレッドパターン)、サイドウォール、フィラー、ビード部、さらに言えば、ホイールにもリムやディスク部などに高い剛性が求められる。

 車体マウント部分には耐久性や、乗り心地=NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネスの略)の観点からゴム製のブッシュを介することが多く、それらの変形量や特性にも設計上の配慮が求められ、ドライバーも感じ取る必要がある。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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