タイでカーボン製レーシングカーを量産しアジア圏に普及させたい

タイでカーボン製レーシングカーを量産しアジア圏に普及させたい

スーパーGT500車両のモノコックは東レ・カーボンマジック製品

 カーボンマジック・タイランドの新工場落成式典には、日本からSUPER GTを運営するGTアソシエイション(GTA)から坂東正明代表が駆けつけている。東レ株式会社がカーボンコンポジット事業を童夢から買収した後も、「カーボンマジック」の名称が引き継がれた。一方、東レ・カーボンマジックの滋賀県米原市にある本社社屋の一部で童夢が営業を継続していたため誤解の多いところだが、東レの買収をもって、童夢と東レ・カーボンマジック株式会社及びカーボンマジック・タイランドは資本関係のない別会社となっている。WEB CARTOP

 当然、別会社同士、受発注の関係はあるものの経営はまったく別個に進められている。現在、東レ・カーボンマジック本社敷地内で間借り状態にある童夢も、2016年4月を目途に米原市内に自社新社屋を建設中で、移転をもって所在地も変更になる。

 レーシングカーコンストラクターである童夢と関係がなくなったとはいえ、東レ・カーボンマジックは現在もモータースポーツに深く関わっており、今後も積極的にモータースポーツ関連製品の開発・製造を行うと公言している。現在ではカーボンコンポジットはレーシングカーにとって不可欠の材料であり、東レ・カーボンマジックは世界でも最前線にあるカーボンコンポジット製造会社であって、日本のモータースポーツは東レ・カーボンマジックを抜きにしては成立し得ない時代なのである。P1160062

 カーボンコンポジット・タイランドの新工場落成記念式典には、SUPER GTを運営するGTAから、坂東正明代表が来賓として出席した。GTAと東レ・カーボンマジックとの関係は深い。現在、SUPER GT GT500クラスで用いられているDTM クラス1の基準に適合した共通モノコックは、GTAが東レ・カーボンマジックに発注、製作、供給する関係にある。つまり、昨年シリーズを戦った3メーカー計15台のGT500車両のモノコックはすべて東レ・カーボンマジックの製品なのだ。WEB CARTOP

 GTAは2019年度よりDTMと車両規則の完全統合を目指しており、そのとき使用される共通モノコックも、日本側では東レ・カーボンマジックが製造することになると坂東代表は言う。
また、昨年GT300クラスに導入されたマザーシャシーも、初期のモノコックは東レ・カーボンマジックで製作、GTAに納入されたものだ。

 マザーシャシーはGTAが「日本のモノ作り技術」を育成するために力を入れて推進する独自クラスで、シャシー、エンジンなど共通基本コンポーネントをGTAが販売供給し、ユーザーはそこに任意のボディや足回りを組みつけてオリジナルGT300マシンを製作できるという仕組みである。WEB CARTOP

 近年、GT300クラスではFIA基準で開発販売されるFIA-GT3車両が主流派となっている。戦闘力も完成度も高いFIA-GT3車両は、SUPER GTに参戦するユーザーにとっては便利な「完成品」である。
しかしFIAの規則上購入時の仕様に独自の改造を加えることは許されておらず、完成度は高いものの導入後は高価な公認パーツの交換以外にメンテナンスガレージの仕事はなくなって、「モノ作り技術」が衰退するという弊害もある。

 元々レーシングガレージを経営してきた坂東代表は、日本のモノ作り技術の行く末を憂慮し、マザーシャシー導入を推進した。その結果、昨シーズンはTOYOTA86ベースが3台、ロータス・エヴォーラが1台の計4台が実戦に登場した。

 しかしマザーシャシー自体、まだ完全にトラブルシュートが終わっておらず、コスト面でも当初予定したよりも高くついているので当面は開発熟成期間とし、一般販売は事実上保留となった。今後開発を進め、近い将来は国内のみならずアジア地域へも普及させ、レーシングテクノロジーを競う基盤にしたいとGTAは言っている。WEB CARTOP

 昨年からGTAのプロモートで開催が始まったFIA-F4選手権で使われる童夢F110のモノコックも、童夢が設計し、製造を東レ・カーボンマジックに発注して完成したものだ。2015年向け生産第1ロットの45台は完売、現在第2ロットの生産が行われている。こうしたカーボンコンポジット構造の製品を量産できる業者は現在、数々のノウハウを蓄積してきた東レ・カーボンマジック以外には存在しない。WEB CARTOP

 東レ・カーボンマジックは今後、今回落成したカーボンマジック・タイランドを「生産拠点」と位置づけており、カーボンコンポジット製品の量産技術を追求することによって品質向上とコスト低減を目指すという。そして将来的にはタイでレーシングカーを量産してアジア圏に普及させたい意向のようだ。GT500モノコックはもちろん、マザーシャシーやFIA-F4のモノコック生産もその視野には入っている。WEB CARTOP

 開発拠点としての米原本社、生産拠点としてのタイと、カーボンコンポジット事業に対する体制を整えた東レ・カーボンマジックが、今後日本の自動車産業、レーシングカー製造業にどのような影響を及ぼしていくのか、楽しみに眺めたい。

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