【試乗】V8ターボのフェラーリGTC4ルッソTは獰猛なリアルスポーツ!  (2/4ページ)

GTC4ルッソの魅力は強大なトルクによる獰猛な加速!

 GTC4ルッソのパッケージは大人が4人乗ることができるグランドツアラー。アルプスの山々を臨みながら、何の制約も何の我慢も必要なく、好きなときに好きなところに行ける魅力を確認した。それは歴代のフェラーリにはなかった新しい価値である。パワーアップしたフェラーリ唯一の4WD、GTC4ルッソは、自然吸気のV12気筒と世界でも例がないユニークなAWDシステムを持つスーパー4WDとして私を魅了した。

 本稿の主役となるV8ターボを積むGTC4ルッソTはといえば、GTカーとしては理想的な4WDから後輪駆動に変わったことからもわかるように、スポーティなキャラクターが想像できる。

 しかもエンジンは、最高出力こそGTC4ルッソよりも80馬力下まわるが、最大トルクは63N・mも上まわるのだ。これが楽しくないわけはない。早速トスカーナ地方のワインディングに連れ出して、4WDと後輪駆動、V12とV8ターボの違いを確認してみることにした。

 注目すべき駆動方式の違いは、タイヤのグリップ限界内ならさほど感じられない。もともとこの4WDは、アンダーステアを嫌ってRWD風の操縦性を実現した駆動システムなので、フィールでの大きな差はない。しかし、やはりというべきかエンジンのキャラクターと走り味はまるで異なる。

 スペック的には0-100m/h加速はV12もV8も3.5秒、100Km/h-0ブレーキは33〜34mとほぼ同じだ。いずれもGTスポーツカーとしては、打倒フェラーリを合い言葉に開発を続けるライバルたちの実力を考えても、負けず劣らずの第一級のパフォーマンスを持っていることは間違いない。

 ギヤボックスにDCT(ツインクラッチ)を採用するのもGTC4ルッソ、GTC4ルッソTともに同じだ。しかし、モノをいうのはやはりトルクである。シフトアップ&ダウンする常用域ともいえる4000〜5000回転のトルクは、自然吸気V12とV8ターボでは2倍ほど異なる。

 6.3リッター自然吸気V12の最大トルクは697N・m/5750rpmだが、常用域ともいえる4000〜5000回転では400N・m前後。いっぽう3000回転から760N・mという最大トルクを発生するV8ターボは、この常用域たる4000〜5000回転では常に760N・mの最大トルクを発揮し続けるのだ。

 つまり、我々がパドルシフトを使用してギヤチェンジを楽しむ常用回転では2倍近いトルクの差があるということである。

 たとえば、V8ターボの実力を試そうとスロットルを踏んだままシフトアップされると、助手席にいると脳震盪をおこしてしまいそうなほど強烈な加速が体を襲うのだ。助手席の人が口から泡を吹いていても、ドライバーは気にせずスロットルを踏み続ける。アドレナリンによって理性を失っているからだ。

 そんなドライバーを夢中にさせるダイレクトで獰猛な加速感こそが、GTC4ルッソTの魅力。2016年インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞したV8エンジンの最新進化版たるパワーユニットのパフォーマンスだ。


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