メーカー選手権のヒーローたち【フェラーリ・世界スポーツカー選手権編その2】 (2/2ページ)

F1GPに続いてスポーツカー・レースでもミッドシップが主流に

 ちなみに、この1963年シーズンはそれまでのスポーツ・プロトタイプを“GTプロトタイプ”と呼び変えてインターナショナルトロフィーが始まったシーズンでもあった。もちろんここでもフェラーリは大活躍で、250GTOによる国際マニュファクチャラーズ・タイトルに加えてGTプロトタイプでもタイトルを獲得している。こちらの主戦マシンはテスタロッサと共通の3リッターV型12気筒エンジンをミッドシップにマウントする250P。

 そう、F1GPに続いてスポーツカーレースでもエンジンのミッドシップ・マウント化が主流になっていったのだ。そしてGTプロトタイプだった250P(プロトタイプを意味)には、クローズドクーペの250LM(LM=ルマンを意味)が追加された。フェラーリとしてはこちらでGTカテゴリーを戦うもくろみもあったが、流石にフロントエンジンのGTO(GTのホモロゲーションモデルを意味)のエボリューションモデルだとFIAを納得させることは叶わず、250LMはGTプロトタイプとして参戦を続けている。そのためにエンジンもGTの規定に縛られなくなったことで3.3リッターV型12気筒の275ユニットに換装され、そのためには非公式ながら275LMと呼ばれることもある。

 それまでのGTプロトタイプに比べると250LMは、GTカーとしてのホモロゲーションを狙っていたから当然と言えば当然だが、よりロードゴーイングカーに近い雰囲気を持っていた。しかし、GTとしてのホモロゲーションが認められなかったことから、これ以降はより先鋭的なプロトタイプが投入されることになった。それが250PをルーツとするP(プロトティーポ)シリーズ。

64年には250Pとほぼ同様のボディに3.2リッターV型12気筒エンジンを搭載した275Pと、さらに4リッターV型12気筒エンジンを搭載した330Pが登場しているが、最強のライバル、フォードが力をつけてきたこともあり、翌65年にはボディ/シャーシにも手が加えられ、それぞれ275P2と330P2へと進化している。鋼管スペースフレームにモノコックタブを組み合わせたセミモノコックに替わったことがシャーシの最大の変更点で、エンジンもシングルカムからツインカムヘッドに変更されパワーアップを果たしていた。

 さらに66年になると330P2は330P3へと進化して行く。キャブからインジェクションに変えるなどしてエンジンを再チューニング。しかしそれ以上に手が加えられたのはボディ/シャーシで、マルチ・チューブラー・フレーム(鋼管スペースフレーム)にモノコックタブを加えたセミモノコックフレームにコンバート。ボディデザインも、空力的に詰めて抑揚の効いたボディに半球型のキャノピーを持った、よりレーシングライクなルックスへと変身していた。

期待に応えて330P3は、モンツァやスパ-フランコルシャンの1000kmレースで優勝を飾ったものの、ハイライトであったル・マン24時間ではトラブルやアクシデントで総崩れ。連勝記録も6でストップし、自身の持つ通算最多優勝記録を更新するル・マン24時間10勝目はお預け。ライバルであるフォードに初優勝を許してしまうことになった。

その後330Pシリーズは進化を続けて70年代の512シリーズに発展するとともに、65年に登場したディーノ・シリーズも独自の発展を遂げることになるが、それはまた機会を改めて。

 シルバーのボディに赤・白・青とトリコロールのストライプが走る1963年式のフェラーリ250LMは、今年4月にマラネロのガレリア・フェラーリ(フェラーリ博物館)で撮影。同じ250LMで少し明るめの赤に塗られた個体は、フランスはミュルーズにある国立博物館、通称“シュルンプ・コレクション”の収蔵車で、これは2012年の6月にマトラ自動車博物館で開催されたル・マン24時間レースがテーマの企画展に貸し出されたものを撮影。15年の2月にはミュルーズで再開している。もっともレーシング・フェラーリっぽい深紅のボディに26ゼッケンが貼られた個体は66年式のフェラーリ330P3で、2013年に初めて訪れたガレリア・フェラーリで撮影。


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