【ライバル比較】ドイツ勢とも勝負できるのは本当か? トヨタ・ハリアーvs輸入SUV (1/2ページ)

ライバルは輸入プレミアムモデル

 ハリアーは、国産SUVのなかで人気、実力ともに抜きん出た存在として認知されている。ならば輸入プレミアムSUVと比較しながら、あらためてそのパフォーマンスと優位性を検証してみよう。

トヨタ・ハリアー
ハリアーが牽引するプレミアムSUVの市場動向

 SUVは悪路を走破するクルマとして生まれ、大径のタイヤを装着してフェンダーもワイドに張り出す。最低地上高にも余裕があり、存在感が強く見映えもいい。これこそSUVがウケた最たる理由のひとつと言える。ふたつ目の理由は優れた実用性だ。ボディの上側は背の高いワゴンスタイルだから、前後席ともに快適に座れて荷物も積みやすい。この実用性とカッコよさの両立が、新しい価値として人気を得た。セダンやクーペでは、実用性とカッコよさは両立しにくいが、SUVなら無理なく兼ね備えられる。

トヨタ・ハリアー

 そしてSUVが普及する過程では、ヒエラルキーがなく安価な車種でも引け目を感じない魅力があったが、市場が拡大すると「SUVの高級車に乗りたい、ほかの車種に差を付けたい」という要求も生まれる。そこで注目を集めたのがハリアーを筆頭としたプレミアムSUVだ。

トヨタ・ハリアー
欧州プレミアムブランドがハリアーに追従

 とくに今世紀に入ると、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどのSUVが増えた。以前なら欧州メーカーは、走行安定性の確保が難しい高重心のSUVに慎重だったが、技術の進歩、北米での旺盛な需要、販売増強の観点からSUVを充実させている。欧州のプレミアムブランドが参入したことでSUVのイメージもさらに高まった。

トヨタ・ハリアー

 ハリアーは初代を1997年に発売したから、欧州車に先んじたプレミアムSUVの老舗だ。日本のメーカーは1950年代からトヨタ・ランドクルーザー、日産パトロール、三菱ジープ(ライセンス生産)などを手掛け、80年代にはオフロードSUVが好調に売れた。SUV作りには確固たるノウハウを持つ。

 最近は子育てを終えたミニバンのユーザーがSUVに注目している。今後もSUVはプレミアムモデルを含めて、堅調に売れ続けるだろう。

トヨタ・ハリアー
技術力ときめ細かな配慮こそハリアーの魅力

 昔は「いつかはクラウン」と言われたが、今は「いつかはハリアー」だ。この2車種は国内市場を重視して開発され、日本のユーザーが抱く高級感を大切にしている。そのためにファンも多い。

 SUVを買うときは、日本車と欧州車を乗り比べるのがいい。日本のセダンやクーペは欧州車を手本に開発された面があり、日本車が物足りない印象を受けることもあるがSUVは違う。車内のスペースの取り方、視界、乗降性などに独自の工夫があり、欧州車と比べることで、国産SUVのよさを再発見できる。

トヨタ・ハリアー
確固たるブランド力に対するハリアーの強み

 欧州メーカーは、カテゴリーよりもブランドの持ち味を重視して商品開発を行なう。「X3である以前にBMW」であるわけだ。ブランドをベースに置くことで、商品を個性化させている。そのためにユーザーも「次に買うクルマはBMWにしたい」「メルセデス・ベンツが欲しい」という具合にブランドから入ってSUVに行き着く。

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 これに対して日本のメーカーは、各車種の個性を重視する。ハリアーとFJクルーザーは両車ともにトヨタのSUVだが、内外装から走りまで大きく異なる。このクルマ作りの違いはメーカーの規模に基づくものだと言っていいだろう。2016年の販売実績はBMWブランドが200万台、ダイムラーは300万台だが、トヨタは922万台(グループ全体では1018万台)に達する。

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 トヨタをはじめとする日本のメーカーは多種多様な商品を手掛けるので、各車種にメーカーの共通性を持たせるのは難しい。だからこそハリアーには固有の魅力が備わる。欧州車のファンにとってブランドの共通性は大切な特徴だが、ハリアーはトヨタとしてのシバリがないことで、内外装を都会的に艶っぽく仕上げ、独自の世界観を構築できた。

トヨタ・ハリアー
欧州プレミアムSUVとの洗練度比較

 質感と価格の関係にも注目したい。X3は価格がもっとも安いxドライブ20iが624万円、GLC200も597万円だが、ハリアーなら自然吸気の2Lエンジンを積んだプレミアムの4WDが344万4120円となっている。半額に近い価格で、X3やGLCに見劣りしない質感を備える。

 この背景にはトヨタのクルマ作りがある。ハリアーのインパネ表皮は合成皮革の模造品だが、作り込みはていねいだ。質感は見る人の感性に基づき、本物か模造品かはウンチクであって本質ではない。高級な本革を使えば300万円台の価格でこの仕上がりは実現できない。

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 素材の使い方や細部の仕上げなど、価格が1.5倍以上となる欧州SUVと比べても遜色のない出来映えとなる。シート表皮の素材はグレードによって複数用意されている。運転席まわりは日本人好みのゴージャスな作り込みがなされる。

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ライバル分析 vs BMW X3

トヨタ・ハリアー

 各種機能の操作スイッチは運転席に向けて配置されたドライバーオリエンテッドな造りが大きな特徴となる。トリムやシートには厳選された素材が採用されている。高級SUVらしい満足度の高い造りだが、ハリアーもこの点は引けを取らない。

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ライバル分析 vs メルセデス・ベンツ GLC

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 インパネまわりはデザイン、機能ともにCクラスを踏襲。先進的で上質な雰囲気は高級車に相応しい。高額車両とあって質感の高さは申し分なし。重厚さを感じさせる作り込みはメルセデス・ベンツならではの特徴で満足度は高い。

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そしてハリアーを運転した多くのユーザーが共感する理由は、国内市場に向けて開発された商品であるからだ。たとえば日本の使われ方では、買い物などに出かけて頻繁に乗り降りすることが想定される。そこでハリアーはサイドシル(ドアの下側にある敷居の部分)と床の段差を小さく抑えた。

 X3やGLCには欧州車ならではの優れた走行安定性、長距離移動でも疲れにくいシート、運転に集中できる機能的な操作系など、各ブランドを象徴する個性が備わる。対するハリアーは内外装の高い質感、使いやすさ、割安な価格が特徴だ。それはトヨタ車の、というよりも日本車に宿る一番の魅力だろう。ハリアーは日本車の王道を走っている。

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