エコカーで耳にする「ミラーサイクルエンジン」って何?

圧縮比を高めず膨張比だけを高めたエンジン

 エンジンはピストンが上下に動くことによって、そのシリンダーの容積を変化させます。ピストンを上昇させて吸い込んだ空気を圧縮し、燃焼させた時のエネルギーによってピストンを押し下げます。それぞれ圧縮比、膨張比と呼びますが、普通のエンジンでは圧縮比と膨張比はイコールなんです。

ミラーサイクル

 ところが高効率を狙おうとすると、もっと膨張比が欲しくなるのです。普通に考えると圧縮比を高めればいいわけですが、しかし圧縮比を高くしていくとガソリンエンジンではノッキングが発生してしまいます。つまり、普通のエンジンではノッキングが発生しない上限で、圧縮比を決めているのです。

ミラーサイクル

 では圧縮比を高めないで、膨張比だけを高める方法はないのでしょうか? それを実現したのがミラーサイクルエンジン、あるいはアトキンソンサイクルと呼ばれるものです。

 圧縮比よりも膨張比を大きくする方法は、いくつか生れました。日産の可変圧縮比エンジンのようなコンロッドにリンクを介する方法が、機械的に実現するひとつの方法でした。実際に現在、ホンダが発電用エンジンにそうしたサブコンロッドを使った機構を採用してアトキンソンサイクルとしています。

 その後、吸気系のなかにロータリーバルブを組み込んで吸気量を制限することで、見た目の圧縮比を低くする方法もありました。これはマツダがユーノス800/ミレーニアで登場させたミラーサイクルの手法です。

ミラーサイクル

 アトキンソンサイクルが大々的に登場したのは、初代プリウスです。吸気バルブのタイミングをずらすことで吸気量を少なくすることで、実際の圧縮比を低くする手法です。そのためエンジンの構造は通常のものと変わらず、ノーマルエンジンのカムシャフトとピストンを変更しただけのローコストなものでした。同じ排気量でも、吸気量が少ないので、パワーもトルクも出ません。ミラーサイクル

 またアイドリングに近い低回転も、4000rpmを超えるような高回転も、苦手です。ハイブリッドシステムの発電・駆動用エンジンで、発進・低速ではモーターが主役ですね。そのためパワーが少ないアトキンソンサイクルが採用できたわけです。

ミラーサイクル

 現在は可変バルブタイミング機構を使って、アトキンソンサイクルと通常のサイクルを切り換えることができるようになっています。そのためハイブリッド用ではなく、普通のモデルでもアトキンソンサイクルが採用されています。

 吸気バルブのタイミングを、通常よりも早く閉じて吸気を制限するか、遅く閉じて一度シリンダーに入った吸気を押し戻すか、いずれかの方法によってアトキンソンサイクルを成立させています。パワーが必要になれば、通常のモードに切り換えるわけです。

ミラーサイクル

 アトキンソンサイクルは、燃焼エネルギーの回収率を高めるシステムです。燃焼そのものは基本的に変わりません。だからパワーモードへの切り換えもスムースで問題は出ませんが、燃焼そのものを切り換えるとなると大きな問題点がたくさん出てくることになります。それはまたいずれ、紹介したいと思います。

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