【試乗】日本車顔負けの使い勝手! ルノー カジャーのちょうどいい感が凄い (2/2ページ)

流石バカンスの国フランスのSUV! 遠出に必要なパワー&トルクは十分

 ならば当然のごとく、パワートレインはある程度以上の力強さが欲しいところだろう。カジャーのエンジンは、ルーテシアやキャプチャー、カングーなどでは定評のある1197ccの直列4気筒の直噴ターボ。パワーとトルクは、131馬力/5500rpm、20.9kg-m/2000rpmというチューニングだ。これにメガーヌと同じ7速のデュアルクラッチ式2ペダル・トランスミッション(7速EDC)が組み合わせられている。1410kgというルーテシアより190kg重い車体に、これで大丈夫かな? という疑問がちょっと湧いた。

 が、結論からいうなら問題なし。クルマのポジショニングがポジショニングだからスポーツカーのような速さは望むべくはないけれど、EDCのマネージメントがかなり賢く、トルクの有効なところを適切に使わせてくれることもあって、あらゆる場面でもまったく不満のない力強さを感じさせてくれた。

 街中だけじゃなく、高速道路も、登り坂のあるワインディングロードも試してみたけれど、へっちゃらもいいところ。意地悪くシフトをシーケンシャル操作して高回転まで引っ張ってみたりもしたけれど、確かに上まで回したところで胸がすくほど気持ちいいってわけではないものの、そこに至るまでの低中速域で充分に満足できる車速の上がりぐらいを見せてくれるから、それはそれで納得がいく。普段は洒落た街中での相棒、休日には皆で乗り込み長い距離を走って遊びに行くためのクルーザーとして考えれば、むしろ適切なパワートレインであるようにも感じられた。

 ちょっとばかり「ん?」と感じたのは、シャシーの方だ。タウンスピードで路面の荒れた箇所を通過するときに、その荒れ具合をわりと正直に身体へと伝えてくるのだ。日本仕様のカジャーは19インチのホイールと225/45サイズのタイヤを履いている。おそらくそれが理由なのだろうと思われる。

 というのも、高速道路では見事にルノーらしいフラットライドを味わわせてくれて気持ちよかったし、ワインディングロードでは適度にシャープでスポーティといえるハンドリングとともに豊かに伸び縮みして路面を粘っこく掴み続ける足の動きの良さを実感できたし、そこそこの速度で砂利道を走ってみたら予想より遙かに快適だったし、つまりはサスペンションそのものはしっかりとルノーらしい働きを見せるのだ。

 あるいは試乗したクルマがまだ400km少々しか走っていない降ろしたてで、クルマのどこにもアタリがついてない状態だったことも大きいのかもしれない。本国には17インチ仕様もラインアップされているので、そちらも試してみたいし、もっと距離を走った状態であらためて試してみたいな、と感じたのが正直なところだ。まぁ……概ね快適だったのも確かではあるけれど。

 ちなみにこの日、距離はごく短いものの握り拳ほどの石もゴロゴロ転がっている凸凹道にも侵入してみた。4WDではないし、キャプチャーには備わる砂地や凹凸地で有効な走行モード切り替えシステムを持たないから、恐る恐る分け入ってみたのだが、いや、それはもうまったく杞憂だった。

 普通に日常生活を過ごしてる限りはあんまり出逢うことのない路面だが、最低地上高200mm、アプローチアングル18度、デパーチャーアングル28度という下まわりが、あっけなくクリアさせてくれたのだ。カジャー、意外に逞しいのである。

 日本におけるカジャーは、現時点ではインテンスのみのモノグレード。価格は347万円。ハードなラフロードよりハート・フルなフレンチ風ヴァカンスに惹かれる人は要チェック、だ。



嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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