エクリプス クロスの走りを支えるS-AWC! 三菱の走りを支えた4WDの歴史を振り返る

エクリプス クロスの走りを支えるS-AWC! 三菱の走りを支えた4WDの歴史を振り返る

4WDの進化は三菱の進化でもある!

 三菱独自の技術というのはいろいろとあるが、そのなかでも三菱らしいのは、やはり4WDだろう。市販車への採用のみならず、ラリーでの大活躍も4WDがあったからこそ。その進化について検証してみよう。

 クルマの技術として2輪駆動が当たり前だった時代に、4輪すべてを駆動させればより力強くなるのでは? と考えるのは自然な流れ。もちろん言うは易し、やるは難しで、問題なく機能させるのは至難の技。4WDが実用化された初期の段階では、いわゆる直結4WDが多く、悪路だけを走るものとして捉えられてきた。悪路であれば、前後が直結されていても滑る路面が逃げ場のなくなった駆動力を逃してくれる働きをしてくれたので、大きな問題になることはなかった。用途も産業や軍事に限られていた。
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 その後、前後デフの真ん中に装着されたトランスファーで切り離しを行うことで、緊急時のみ手動で4WDとするパートタイムが主流となる時代が長く続く。こちらもレジャー用ではなく、あくまでも産業用として活用された。

 1982年にピックアップトラックのフォルテをベースにしたSUV、パジェロが大ヒット。いわゆるクロカンブームが到来する。同じくフォルテをベースに、デリカスターワゴンの4WDモデルを登場させているのは注目である。こちらは日本初のワンボックス4WDであり、現在、D:5として愛されているのはご存じのとおりである。
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 もちろんパジェロの4WDシステムは従来からのパートタイム式であったのだが、1987年に登場した6代目ギャランの最上級グレード「VR-4」で、新たなる境地を切り開くことになる。フルタイム4WDを乗用車に採用するというのは、1980年代後半の大いなる進化であり、他社ではファミリア4WD(国内初フルタイム4WD)やレオーネなどが、続々と登場した時代だ。現在当たり前になっているとはいえ、乗用車に4WDを搭載するというのは悪路走破は求められないジャンルだけに、当時としては画期的なこと。乗用車に4WDを搭載する目的は、走行安定性の向上が主だった。
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 ギャランVR-4の登場も含めて、世界的なフルタイム4WDの興隆は、背景にはアウディのクワトロが与えた大きな衝撃があったし、4WDマシンでないと勝てなくなっていた、WRCへの参戦というのも後押ししたと言っていいだろう。

 ギャランVR-4は、センターデフを装備して前後の回転差を吸収しつつ、ビスカスカップリングを採用することで、トルク抜けへの対応もなされていた。ちなみに4WS/4輪独立懸架/4バルブエンジン/4ABSなどを装備して「アクティブフォー」と呼ばれ、先進性を大いにアピールした。また、WRCでは1989年の1000湖ラリーでランサー以来の優勝を飾っている。
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 ここまでなら単純にセンターデフを持ったフルタイム4WDの登場という話にしかならないし、各メーカーとも開発を進めて市販化していた。三菱も「RVの三菱」として、RVRなど続々と4WDモデルを投入していたが、システム的には特記すべきものはなかったというのが正直なところではある。

 三菱の4WDシステムが大きな注目を浴びることになったのが、1996年に登場したランサーエボリューション4に搭載されたAYCだ。AYCとは「アクティブ・ヨー・コントロール」の略で、ハンドル角/ヨーレイト/駆動トルク/ブレーキ圧/車輪速などの情報を解析して、ドライバーの操作と車両の挙動を判断。その結果、ドライバーの意思や操作に忠実な挙動になるようアシスト。作動上の特徴としては左右後輪の駆動力を積極的に変化させることで、コーナーでの回頭性を向上させるだけでなく、ブレーキング時の安定性にも寄与する高度なものだった。電子制御であるが、作動自体には油圧を使用している。
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 これを武器にWRCで活躍したのはご存じの方も多いだろうし、市販車でも4WDの特徴であるアンダーステアを消し去り、「曲るヨンク」として人気を博した。その後、内部構造(ベベルギヤからプラネタリーギヤへの変更)を見直すことで、2倍の作動量を実現したスーパーAYCへと進化している(ランエボ8から採用)。
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 さらにAYCだけに止まらないのが、三菱の4WDの進化だ。2001年に登場したランエボ7から採用されたのがACDだ。こちらはアクティブ・センター・ディファレンシャルの略で、前後の差動制限を電子制御で行うのが役割となる。
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 基本の駆動力配分を50対50とし、前後輪の差動制限をフリーから直結状態まで制御する。ベースとなる入力情報は、車輪速/ハンドル角/エンジントルク/ブレーキ圧/ヨーレイトとAYC同様に多く、複雑な解析を行いながら、高度なレベルで制御するのが特徴となる。
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 もちろんスーパーAYCとACDの統合制御化は進み、大きな進化を遂げつつ、三菱ならではの4WDシステムとして世界的な評価を得ていく。それが、現在のS-AWCへと繋がっていくのだ。そのなかで、ランエボが現役時代にその開発にもレーシングドライバーとして関係した、モータージャーナリストの中谷明彦氏によると、じつは「S耐制御」という、S-AWCに盛り込める最高レベルの制御があったことを明かしている。
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 諸般の事情でエボ10にも搭載されることはなかったが、極端な仕様すらも可能にしてしまうのが、三菱が長年にわたって開発し、進化させてきたS-AWCのレベルの高さと懐の深さというものだ。

 現在、スポーツカーは三菱のラインアップからなくなっているが、操る楽しさや安心感などはエクリプス クロスのS-AWCにもしっかりと息づいている。世界的なSUVブームで、搭載される4WDシステムもさまざまなものが登場しているが、三菱のお家芸とも呼べるS-AWCは別格の存在感と言っていいだろう。
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