海外では人気なし! ミニバンを異常に有り難がる日本の特殊な自動車事情

アメリカでは「大の男」が乗るクルマではないというイメージ

 アメリカでミニバンは「サッカーマム(ママ)が乗るクルマ」というレッテルを張られている。お母さんが子どもをサッカー教室の送り迎えに使う移動手段、という意味だ。ただし、サッカーはあくまでも目的のひとつであって、学校の送り迎えや買い物など、生活全般における移動の代名詞として使われている。

 また、マム(ママ)という言葉の裏には、「大の男が乗るクルマじゃない」という意味が含まれている。ミニバンと同様に、多人数乗車できる大きなクルマではSUVがあるが、SUVならば運転するのは女性でも男性でもOKというイメージが強い。アメリカ人にとってのミニバンは、小型バスのような商用車のイメージが優先する傾向が強い。車種としては90年代から、クライスラー(現FCA)の「キャラバン」が代表格で、その他ではトヨタ「シエナ」がサッカーマムの御用達だ。

 ところ変わって、タイ、インドネシア、ベトナムなどの東南アジアに行くと、日本から輸入された「ハイエース」や「アルファード/ヴェルファイア」の姿をよく見る。これらは旅行業者が高級送迎車として使用している。乗り心地が良く、インテリアも綺麗なので日本人用だけではなく欧米人からの評判も良い。ただし、こうしたミニバンを乗用車として使う人はいるにはいるが、けっして数は多くない。

 一方、中国で送迎用ミニバンでもっともポピュラーなのが、GMビュイックの各モデルだ。GMは日系自動車メーカーと比べて比較的早い時期から中国市場へ本格参入しているため、ミニバンでも高い知名度を誇っている。

 また、中国では最近、セダンからSUVへのシフトが急速に進んでいるが、その流れの中で、まだ少数派だが「アルファード/ヴェルファイア」などの高級ミニバン志向の若年層が登場している。

 このほか、欧州でもミニバンは商用車のイメージが圧倒的に強く、乗用車として使う人は極めて少ない。このように、世界市場でミニバンを乗用として多用しているのは日本だけなのだ。その理由について、日産の新世代デザインを統括してきた、元日産チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏は次のように解説する。

「日本人にとってミニバンは、家庭の延長のような存在だ。家族と一緒に過ごす家庭の空間を屋外にそのまま持っていきたい。そうした願望が強い。長年に渡り、日産で自動車の在り方を研究し、そしてデザインしてきた立場として、こうした日本人のミニバン志向は世界でも極めた稀だと感じた」

 日本でのミニバン人気は、日本人の生き方そのものだということだ。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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トヨタ・ハイエースキャンパーアルトピア―ノ等
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動物たちとのふれあい
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