フレームの強化は走りに大幅貢献! 新型スズキ・ジムニー開発責任者インタビュー (2/3ページ)

ジムニーでなければ走れない道がある

──今回プロユーザーをメインターゲットにしたのはなぜですか?

米澤:「プロユーザー」とはつまり、ジムニーユーザーの中でもジムニーでなければ仕事に行けない、その道を走っていくことができない人、ということですね。海外でも森林組合、ハンター、電設業などの人は、ジムニーでなければ走れない道を走るわけですから、必然的にジムニーがまさに仕事に使うクルマになるわけです。 それは本当に山奥になるんですが、例えば地方でも坂がきつい、雪が深い、除雪がなかなか進まないような所でも走って行かなければならない人は、ジムニーでなければその地域の家にものを届けられないわけです。

あぜ道を走るキャリイにとって、小まわり性能が非常に重要なのと同じですね。そういう人たちにずっとジムニーに乗ってもらっています。 都心に住むユーザーは4Lモードをずっと使わないかもしれませんが、雪が降ったときや、年に2回キャンプへ行くときなどに、ジムニーの性能が役立ちます。 そうした使用実態を踏まえ、新型ジムニーにはイメージカラーを2つ、目立つ黄色(キネティックイエロー)と目立たない緑(ジャングルグリーン)を設定していますが、テーマのあるカラーというのはなかなか珍しいと思うんですよ。

──ラダーフレーム、縦置きFRレイアウト、副変速機付きパートタイム4WD、4輪リジッドサスペンション、5速MT&4速ATといったメカニズムは全て踏襲されましたが、その中でとくに重点的に進化させたところは?

米澤:まずはフレームですね。衝突安全性能ももちろんですが、安全安心かつ快適に移動できるようフレームを強化。さらにサスペンションの取り付けをしっかりさせ、ステアリングダンパーを新たに採用することで、操縦安定性と同時に乗り心地を良くしています。 悪路走破性についても、思わぬ大穴に遭遇した場合も安全に乗り越えられるよう、ブレーキLSDトラクションコントロールやヒルホールドコントロール、ヒルディセントコントロールを採用しました。

──先代に対する走りの進化は、オンロードの方が大きいですか?

米澤:オンロードの方が体感しやすいでしょうが、オンロード性能を良くしたことで、オフロードでの四輪の接地感もわかりやすくなっています。先代ではフレームがよじれていたところがよじれなくなりましたので、2WDでも気持ちよく走れると思います。

──ジムニーとジムニーシエラとで設計の差が大きくなったように思いますが、走りの味付けはどのように変えていますか?

米澤:コンセプトは両車で変わりませんので、味付けの方向性も変えてはいません。ただし欧州は最高速が高いので、シエラはその点も重要視し、トレッドを拡大しています。

──シエラはタイヤサイズが変更されています(205/70R15 95Sから195/80R15 96S)が、その理由は?

米澤:タイヤ全体の径を大きくすることで、サイドビューをしっかり見せつつ、悪路走破性上げたいという狙いからです。また、交換用タイヤの入手しやすさにも配慮しました。

──オフロードを走るための設計・セッティング上のポイントは、ほかにも何かありますか?

米澤:まずはオンロードを重点的に考えました。オフロードで傾斜や片輪が浮いた時にはESPで制御し、さらに4Lモード時にはブレーキLSDを入れて脱出性を高めています。オフロードという観点では、とくにESPの発進時の制御を走行モードごとに変えています。また、旧型はメカニカルスロットルでしたが、新型はエンジンが換わり電動スロットルになったことで、ESP作動時にスロットルも制御できるようになりました。

──オンロードでの快適性アップでは、どのような点で苦労しましたか?

米澤:とくにフレームをしっかりさせるところですね。そこが一番キーになっていると思います。先代のものを使いながら開発車両を仕立てて、目標を設定してから設計に入りました。フレームがしっかりすると取り付け点の剛性も上がり、スタビライザーやダンパー、スプリングのチューニングの幅も広がって、セッティングが取りやすくなりました。

──フレームは完全に新設計ですか?

米澤:ほぼ完全に新設計です。形状も溶接点も全然違います。さらにハイテン化で、衝突安全性能と剛性と軽量化を両立しています。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
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ゲーム
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