なんちゃってヨンクだらけの今こそ乗りたい「悪路御用達」の男前国産SUV4選

今や少数派だが存在感と実力はバッチリ!

 今はSUVがブームだが、その発端は1982年に発売された初代パジェロだった。従来のSUV(当時は4WDとか4駆と呼ばれた)は、トヨタランドクルーザーなどを含めて悪路の作業車だったが、パジェロは内外装を洗練させて乗用車感覚に仕上げた。多くのパーソナルユーザーが購入して、4WDがブームになっている。

 それでもこの時代のSUVは、悪路の走破を重視して野性味が強かった。流れが変わったのは、1994年にトヨタRAV4、1995年にホンダCR-Vが発売されてからだ。パジェロのような後輪駆動ベースの4WDを備えたオフロードSUVは売れ行きを落とし、RAV4やCR-Vのような前輪駆動をベースにしたシティ派SUVが人気を高めた。

 シティ派SUVは、オフロード派に比べて居住性、乗降性、走行安定性、取りまわし性、乗り心地などが優れ、プラットフォームは乗用車と共通化しやすいから価格は割安だ。悪路の走破力はオフロード派に負けるが、雪道程度なら十分に走れて実用面の不満はない。悪路の少ない日本では、シティ派がSUVの中心になるのは当然の成り行きだった。

 ただし今のSUVは、乗用車感覚が行き過ぎて曖昧なカテゴリーになっている。ハッチバックボディのホイールアーチと下まわりに、ブラックやグレーの樹脂パーツを装着して、車高を少し持ち上げれば何でもSUVになってしまう。SUVの開発者と話をしていて「悪路の走破力は、全然考えていないです」とキッパリ言われることも多い。そして既存の車種をベースに、外観を上手にSUV風にアレンジすると売れ行きが大きく伸びたりするから、メーカーにとっては安直でオイシイ商品開発になっている。

 従って昔の三菱ジープ、初代パジェロの時代を知るユーザーには、今の小手先だけで要領良く造られるSUVは情けなく思えるだろう。そこであらためて、マトモに悪路を走破できる硬派で男っぽいSUVを取り上げたい。選択の条件は、後輪駆動をベースにした4WDと、悪路で駆動力を高められる副変速機を装着することだ。このタイプの国産オフロードSUVは、今では少数になったから全車を紹介する。

1)スズキジムニー&ジムニーシエラ

 ジムニーの悪口は聞いたことがない。すべてのクルマ好きに愛される永遠のアイドルだ。軽自動車のジムニー、小型車のジムニーシエラともに、悪路の走破に絞り込んで開発された。そこがスポーツにひたすら打ち込む少年のような共感を呼ぶ。

 ラダーフレームを備えた耐久性の高いシャシーとサスペンション、副変速機を備えたパートタイム4WDにより、悪路の走破力は世界の最高水準に達する。

 小さくて軽いボディは、とくに日本の曲がりくねった林道では最強の機動力を発揮する。悪路を飛び跳ねるように、軽快に乗り越えていく運転感覚はまさに絶品だ。ジムニーシエラは海外で高い評価を得ているが、あくまでも「日本の悪路に寄り添うSUV」であることも共感を呼ぶ所以だ。

2)トヨタ・ランドクルーザー

「トヨタジープ」としての発売は1951年、ランドクルーザーに改名したのが1954年だからクラウンよりも歴史が長い。70年近くにわたり、悪路を走り続けている。現行型は全長が約5m、全幅が約2mと大柄で、最小回転半径は5.9mと大回りだ。エンジンは先代レクサスLSと同じV型8気筒4.6リッターを搭載するから、車両重量は2.5トン前後に達するものの、豪快かつ滑らかな加速を味わえる。

 従って海外向けで、内外装も豪華に仕上げ、足まわりは柔軟に伸縮して悪路の走破力も高い。大柄なボディと派手なフロントマスクで周囲の車両を蹴散らすような印象もあるが、本質は硬派のオフロードSUVだ。その意味では、価格のもっとも安いGXがランドクルーザーを象徴するベストグレードといえるだろう。

3)トヨタ・ランドクルーザープラド

 プラドのボディサイズは全長が4825mm、全幅が1885mmと大柄だが、ランドクルーザーよりは少し小さい。日本の林道も、ランドクルーザーほど苦手ではない。悪路の走破力、デコボコの乗り越えやすさは、基本的にランドクルーザーと同等だ。足まわりの伸縮性が優れ、激しい悪路でも駆動力の伝達効率が優れている。

 そしてエンジンは、直列4気筒2.8リッターのクリーンディーゼルターボを用意した。発進直後から余裕のある駆動力が発揮され、クリーンディーゼルターボの中でも、低回転域におけるトルクの落ち込みを小さく抑えた。硬派なオフロードSUVとしての動力性能を味わえる。またオフロードSUVでありながら、舗装路の走行安定性が優れていることも注目される。この性能は重量級のランドクルーザーを上まわる。

4)三菱パジェロ

 現行パジェロは2006年の発売で、舗装路の走行安定性には設計の古さが感じられる。それでも直列4気筒3.2リッターのクリーンディーゼルターボは実用回転域の駆動力が高く、足まわりの動きも柔軟だ。

 設計が古いために無骨な印象を伴うが、そこもまた硬派のSUVを感じさせる。初代や2代目パジェロを知っているユーザーにとっては、伝統あるブランドであることも魅力だろう。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
-

新着情報