給料を全額注ぎ込んで手に入れた男子多数! 女子ウケ抜群だった鉄板デートカー5選

何はなくともクルマがないとデートに誘えない時代があった!

 都会では、ディスコの前にズラ〜っと並んだ路上駐車に、男と腕を組んだ女たちが続々と乗り込んでいく光景。郊外の駅前ロータリーでは、スーッと停まったクルマにゴキブリホイホイのごとく女が吸い込まれていく光景。なにはなくともまずクルマがなくちゃ、ナンパもできない恋も始まらない! 男たちは女にモテたくて、少しでもイイ女をゲットしたくて、なけなしの給料をつぎ込んでクルマを買っていました。

 な〜んて、カーシェアやレンタカーでデートするのも珍しくない今となっては信じられないでしょうけど、80年代はとにかく男女の恋にクルマが必須アイテムだった時代。そしてそんな時代に生まれた女子ウケ鉄板グルマこそ、「デートカー」と呼ばれるクルマたちだったんです。

1)ホンダ・プレリュード(2代目)

 元祖デートカーとも言える、80年代に一世を風靡したクルマといえば、そうです、ホンダ・プレリュード(2代目)。2ドアクーペの若々しいデザインがまず若者に大ウケしたわけなんですが、それもそのはず。デザイナーが「カッコよくするために初代よりボンネットを10cm低くしたい」と開発部門に注文したところ、従来のサスペンション方式では難しく、なんとか実現しようと試行錯誤。その結果、考案されて世界初採用となったのが、ハイマウントアッパーアーム式ダブルウイッシュボーン。そこまでしてカッコよさにこだわったクルマだったんですね。

 プレリュードの女子ウケポイントはほかにもありました。パカッと開いてライトが点灯するリトラクタブルヘッドライトが「かわい〜」ともてはやされ、全車に標準装備されていた電動サンルーフは、爽やかな風を感じたり星空を眺めたり、ロマンチックなひと時を演出してくれたんですよね。そしてイイ雰囲気になってきたら……。なんと、運転席から助手席を倒すことができるレバー、通称“スケベノブ”(笑)なんてモノが付いていたのも、デートカーらしいところでした。そんなプレリュードは60万台も売れたっていうんですから、今じゃ夢みたいなハナシです。

2)トヨタ・ソアラ(初代)

 そしてもう1台、80年代デートカーの代表格といえば、トヨタ・ソアラ(初代)。こちらはプレリュードよりもかなり高級感を前面に出した2ドアクーペで、当時は「ハイソカー」なんて言葉も生まれました。といっても、今の若者たちには意味わからないですよね。同じような意味で使われる言葉を探せば、「セレブ」みたいな感じですかね。

 で、どこがハイソなのかというと、まず170馬力を発生する2.8リッターの直6エンジン搭載! 装備も豪華で、エアコンにタッチパネルが使われていたり、オーディオがマイク録音可能だったり。ヘッドランプは高圧洗浄液式のクリーナー付きで、フロントガラスのウォッシャー液も4点噴射式だったんですよ〜。細かいところもいちいち豪華(笑)。いちばんの女子ウケポイントは、ゆったりとしていて座り心地のいいシートでしょうか。初めて電子制御が採用されたサスペンションも、快適性アップにひと役買っていたようです。

3)トヨタ・ハイラックスサーフ(3代目)

 さぁ、続いて90年代に入ると、今度は空前の「ヨンク」ブームがやってきます。ヨンクといっても今のようにデザインやオンロード性能重視のSUVではなくて、みんな本気の悪路走破性を持ち、「RV車」とも呼ばれいました。ヨンクブームの始まりがどんなキッカケだったのかは諸説あるんですが、1987年に大ヒットした映画『私をスキーに連れてって』でスキー場でのナンパやデートが盛り上がり、その流れで雪道に強いヨンクの人気が急上昇。デートカーとしてクーペから乗り換える若者も多かったというのが一説です。

 で、その代名詞的存在といえばトヨタ・ハイラックスサーフ(3代目)でしょう。もともとはピックアップトラックのハイラックスから派生したモデルで、荷台部分にキャノピーを被せて居住性をアップ。人も荷物もたっぷり積めるオールマイティな使い勝手と、どこへでも走っていけるワイルドさに、女はグッときたもんです。開け放った運転席の窓から、真っ黒に焼けたマッチョな腕なんかが出てて「乗ってかない?」なんて言われた日には、もう自動的に乗り込んでましたよね。いや、想像ですが(笑)。

 ハイラックスサーフは3.4リッターのV6DOHCガソリンを筆頭に、2.7リッター直4DOHCガソリン、3リッター直4SOHCディーゼルと3タイプのエンジンが用意されていて、ミッションは4速ATと5速MTがあり、どれもパワフルでロングドライブに向いていたところも人気の理由でしたね。私の先輩も、ハイラックスサーフで北海道一周の旅に出ていたのを思い出しました。

4)三菱パジェロ(2代目)

 そしてもう1台、そんなヨンクブームの主役だったのが三菱・パジェロ(2代目)です。パジェロはもともと、三菱自動車がアメリカからの委託生産をしていた軍用ジープがルーツ。1983年からパリダカールラリーへの参戦もはじめて、翌年には総合3位、3年目には日本車初の総合優勝を飾っているんですね。当時は地上波でパリダカが放送されていたくらいですから、そこで一気に知名度を上げて人気者に。どちらかといえば、ハイラックスサーフよりもマニアックというか、走り好き・運転好きの若者がパジェロに憧れるという印象でした。

 でも、この2代目パジェロで世界初搭載された「スーパーセレクト4WDシステム」は、それまで一度停車して2WDから4WDにギヤを入れてバックする、という切り替え時の手間をなくし、走りながら切り替え可能とした素晴らしい技術。そのおかげで、多くの人が気軽に4WDを楽しめるようになったんですよね。

5)スズキ・ワゴンR(初代)

 そしてじつはこの90年代、ヨンクブームの影で1台のスーパー軽自動車が誕生していました。それが、スズキ・ワゴンRです。それまで女性が乗るもの、セカンドカーとして乗るもの、というイメージが強かった軽自動車を、男性でも堂々とファーストカーとして乗れるものに昇華させ、カスタマイズで自分だけの個性を表現する楽しさを盛り上げたのがワゴンRです。

 1993年の登場からわずか6年で、累計販売台数100万台を達成したというから、その人気のすごさがわかりますよね。だからもちろん、多くの若者たちがワゴンRをデートカーとして使い、恋を育んでいったと言っていいでしょう。

 2000年代に入ると、もうすっかりデートカーなんて言葉も聞かなくなってしまいましたが、世はミニバン全盛期。トヨタのノア/ヴォクシー、ホンダ・ステップワゴンといったミニバンはもちろんファミリーユースが主役でしたけど、若者がナンパのためにあえて乗るというケースもありましたね〜。その中で、3列シートでありながらスポーティな外観と走りの良さがウリだったホンダ・オデッセイは、「子持ちに見えないミニバン」として不倫デートにいいと、密かに既婚者男性に人気だったとか!?

 というわけで80年代からの女子ウケ鉄板グルマ、振り返ってみました。現代の若者にとっては、物価は高いは環境問題もあるわで不遇な時代ではありますが、やっぱりカーシェアやレンタカーだけじゃなくて、若者がこぞって乗るような現代版デートカー、復活してほしいものですね。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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