売れなくてもダメじゃない! 他人と違うクルマに乗りたいひとが選ぶべき国産車5選

販売台数が低迷している中から価値あるクルマ5台をピックアップ

「他人と同じクルマに乗りたくない」というニーズに合ったクルマを選ぶのは難しい。クルマの用途や好みは個人差が意外に小さく、多くの人たちが同じようなことを考えるからだ。好調に売れる人気車は、多くのユーザーにとって魅力があり、不人気車には逆のことが当てはまる。

 従って販売台数の伸び悩む「他人と違うクルマ」は、必ず売りにくい問題を抱える。もっとも多いのは、海外向けに開発された車種で、内外装のデザイン、ボディサイズ、価格などが日本のニーズに合わないケースだ。また安全装備の乏しい車種も売れないが、これは「他人とは違うクルマ」でも危険が伴うから推奨できない。そうなると購入に値する「他人とは違うクルマ」は大幅に減ってしまう。

1)ホンダ・アコード

 アコードは優れた商品だ。Lサイズセダンだから車内は広く、4名乗車が快適に行える。安全装備もホンダセンシングが装着される。2リッターエンジンをベースにしたハイブリッドを搭載して、一部の巡航時を除くと、エンジンが発電を行い駆動はモーターが担当する。モーターは反応が素早いから、瞬時に高い動力性能を発揮できて加速力にも余裕がある。動力性能をノーマルエンジンに当てはめると3リッター並みだ。

 駆動をモーターが担当すれば、エンジンは発電効率を追求できるから、JC08モード燃費はLXが31.6km/L、EXも30km/Lに達した。カムリの中級/上級グレードが28.4km/Lだから、これと比べてもアコードは効率が高い。

 それなのに売れないのは、全長が4945mm、全幅が1850mmと大柄で運転がしにくく、雰囲気は地味になるからだ。内装もLサイズセダンとしては上質とはいい難い。日本ではこのサイズになると、実用性を超えて趣味で選ぶクルマになるから、地味で質感の乏しいアコードは受けない。1カ月の売れ行きは150台前後にとどまる。

 それでも3〜4名の乗車で長距離を移動する機会の多いユーザーには、快適で燃料代も節約できるから選ぶ価値が高い。グレードはLX(385万円)で十分だ。カーナビも含めてフルに装着される。

2)日産スカイライン

 アコードと同じく、今は海外向けのLサイズセダンになり、売れ行きは低迷する。過去を振り返ると、ケンメリの愛称で親しまれた4代目スカイラインは、1973年に1カ月平均の登録台数が1万3133台に達した。2018年1〜6月は、日産ノートが小型/普通車の販売首位だったが、この1カ月平均が1万2230台だ。つまり当時のスカイラインは、今のノート以上に売れていた。これに比べて今日のスカイラインは243台だから、45年前のわずか2%にとどまる。

 このようにスカイラインの凋落ぶりは物凄い。全長が4815mm、全幅が1820mmと大柄になり、内外装のデザインも日本の趣味性から離れた。フロントグリルのエンブレムは、日産ではなく海外で展開される上級ブランドの「インフィニティ」だ。緊急自動ブレーキは車両のみが対象で、歩行者は検知できない。

 ただし機敏な運転感覚は、スポーティでわかりやすい。メルセデス・ベンツ製の直列4気筒2リッターターボも、動力性能が3.5リッター並みに優れている。価格はフル装備の200GT-tタイプPが443万3400円だ。Lサイズセダンとしてはさほど割高ではない。

3)三菱RVR

 SUVは人気のカテゴリーだが、RVRは発売から8年以上を経過して販売が低迷する。雰囲気が地味で、三菱にはアウトランダー、エクリプス クロス、パジェロとSUVが豊富だからRVRは埋もれた。8年前のエコカー減税に対応するため、エンジンの排気量を1.8リッターに抑えたから動力性能も足りない。

 しかし小さなボディは運転がしやすく、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はアウトランダーやエクリプス クロスと同じ2670mmだから、後席の足もと空間は相応に広い。長いホイールベースは走行安定性も向上させた。ロックモードを備えた4WDを搭載するGの価格は254万1240円だから安くはないが、コスト低減をあまり意識させず良心的に造り込んでいる。

4)スズキ・エスクード

 SUVではエスクードも注目される。ハンガリー製のコンパクトな車種で、RVRと同様に前輪駆動をベースにした4WDを搭載しており悪路の走破力が高い。価格は割安で、4WDを搭載しながら1.6リッターエンジン搭載車が234万3600円、1.4リッターターボは258万6600円だ。

 1.4リッターターボは動力性能が2リッターエンジン並みに高まり、車両のみを検知する緊急自動ブレーキに加えて、サイド&カーテンエアバッグも標準装着される。ターボも積極的に検討したい。

 プラットフォームを共通化したSUVとして、SX4 Sクロスも選べる。後席はエスクードよりも広いが、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備やアイドリングストップが用意されない。これらを装着すれば、SX4 Sクロスも推奨度が高まる。

5)ホンダ・ジェイド

 ステップワゴンのようなミニバンと違って天井が低いから、3列シート仕様は、3列目が超絶的に窮屈だ。前後にスライドする2列目も、座面が短い。満足して座れるのは1列目だけだから、売れ行きを下げた。

 しかし追加された2列シート仕様は注目される。3列目を取り去って2列目も大幅に変更したからだ。スライド機能を省いて固定シートにする代わりに、座り心地を向上させた。座面のサイズもタップリしている。

 そして1.5リッターターボエンジンを搭載する2列シート仕様のRSは、2リッター並みの動力性能を発揮して、安定性と乗り心地のバランスも良い。価格は255万8520円だから少し高いが、4名乗車が快適で走りも上質なミドルサイズハッチバックに仕上げている。ジェイドは最初からこの仕様を設定すべきだった。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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