トヨタ・ホンダに割って入る三菱の技術力! 本格化する国産PHEVの覇権争い

充電がなくなったときにエンジン性能の差が如実に現れてくる

 外部充電した電力によるモーター駆動と、燃料補給による内燃機関というふたつのパワーソースを持つことで、次世代車の中心的存在になると予想されているのがプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。政策的にPHEVが有利なドイツ車では高級モデルを中心にPHEVを多くラインアップしている傾向にあり、各社がしのぎを削っている。そして、いよいよ日本でもPHEV同士の戦いが見られる時期となってきた。

 元祖PHEVといえるのが三菱アウトランダーPHEVで、先日のビッグマイナーチェンジではエンジン排気量を2リッターから2.4リッターへ増やすことで総合的な効率を改善した。トヨタのプリウスPHVはすでに一度のフルモデルチェンジを経験し、さまざまな部分で改善を果たした2代目となっている。そして最後発といえるのがホンダのクラリティPHEV。車格的にはもっとも上となるが、エンジン排気量は1.5リッターと国産PHEVとしては最小サイズ。

 そのかわりバッテリー総電力量は大きい。ちなみに各車のエンジン排気量はアウトランダーPHEVが2.4リッター、プリウスPHVが1.8リッターとそれぞれ異なっている。

 カテゴリーとしてもアウトランダーPHEVはSUVであり、前後をモーター駆動するAWDであるなどライバルと異なるため、性能を横並びで比べるのはアンフェアである。しかし、ハイブリッド燃費(充電電力を使い切ったときの燃費性能)やEV航続距離(満充電からエンジンを使わずに走れる距離)といったPHEVならではのスペックを見比べると、その性能は意外に近い部分と、離れている部分があることに気付くだろう。

車種:ハイブリッド燃費/EV航続可能距離

アウトランダーPHEV:18.6km/L/65.0km
プリウスPHV:     37.2km/L/68.2km
クラリティPHEV:      28.0km/L/114.6km

※燃費や航続距離はJC08モードでの数値

 アウトランダーPHEVとプリウスPHVのEV航続距離はほぼ同じくらいのイメージだが、クラリティPHEVは倍近い余裕がある。一方で、エンジンだけで走るときの燃費性能はプリウスPHVが圧倒的で、アウトランダーPHEVは充電がなくなってしまうと、ハイブリッドとしては少々寂しい燃費性能で走る羽目になってしまうことがわかる。このあたりはベースモデルの素性が大きく影響しているわけだが、その点でいうとDセグメントのボディサイズを持つクラリティPHEVのハイブリッド燃費は車格からすると優秀といえる。

 数値だけ見るとアウトランダーPHEVのハイブリッド燃費が悪いように見えるが、それは重量や空気抵抗が異なるせいでもある。また、プリウスPHVとクラリティPHEVのエンジンがいずれも最大熱効率40%以上と性能が高すぎるゆえに、アウトランダーPHEVがかすんで見えると理解すべきだろう。

 そう、PHEVというのは単に外部充電できる大きな駆動用バッテリーを積んでEV走行ができるようにすればいいというものではなく、エンジン性能も高いレベルが求められる。積み重ねてきた技術が要求される自動車なのである。優れたエンジン、軽量かつ電力量の大きなバッテリー、緻密なエネルギー管理といった、どの要素が欠けてもPHEVに求められる性能を満たすことはできないのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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