DCTやCVTに陰り? トルコンATが今改めて見直されているワケ (1/2ページ)

ロックアップ機構と多段化がATのネガを払拭

 8年前の2010年に、マツダがSKYACTIVに関する技術発表を行った際、変速機(トランスミッション)には従来からのトルクコンバーターを持つ自動変速機(AT)を使うと説明した。当時は、CVT(ベルト式無段変速機)やDCT(ツインクラッチ式変速機)が効率的にも上まわると考えられていたため、奇異に感じたことを覚えている。

 しかしその後、2012年に新世代商品群の第1弾としてSUV(スポーツ多目的車)のCX-5が発売されると、ATが本来持つトルクコンバーターによる滑らかな発進と、6速という多段の変速による変速ショックの少なさ、なおかつトルクコンバーターを使いながら滑りを感じさせない的確な加速に驚かされたものだ。

 同様の感触は、ATを使い続けるメルセデス・ベンツやBMWにもあって、ATが備える技術の奥行きの深さを改めて実感させられるのである。

 CVTは、無段変速であるがゆえにその効果を有効にするなら、エンジン回転数を効率の良いところで一定に保ち、無段の変速によって加速させるのがよい。だが、それでは、速度が上がっていくのにエンジン回転数の変化が少なく、違和感につながる。近年では、違和感を緩和する制御が組み入れられている。

 DCTは、変速の滑らかさでは群を抜いているが、発進に乾式クラッチを使うと唐突な動きが出やすい。湿式クラッチを使えばその点は緩和されるが、耐久性や保守管理という点で乾式クラッチを使うほうが距離を走るクルマには適しているだろう。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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