DCTやCVTに陰り? トルコンATが今改めて見直されているワケ (2/2ページ)

ATの機構自体も進化した!

 そうした中で、ATがあらためて見直されるようになった。ATの性能が飛躍的に高まった背景に、ロックアップと多段変速がある。ロックアップは、流体を使い変速を滑らかに、かつトルク増大させるトルクコンバーターの機能を一時的にとめ、クラッチのオン・オフを使いエンジン出力を直接変速機に伝える仕組みである。もちろん、変速の際にはクラッチを離さなければ変速できない。そこは、マニュアル変速機と同じ理屈だ。そのオン・オフを負荷に応じて自動化している。

 ロックアップ機構そのものは1980年代からあるが、それをより緻密に、なおかつエンジン回転数が低いところでも使えるようにすることで、ATであっても滑りを意識させない変速を実現している。さらに、変速段数を多段化することによって、格段の変速比が接近することから、変速した際のエンジン回転数の差が縮まり、より滑らかかつ素早く変速できるようになってきている。

 それらによりATの伝達効率もあがり、燃費への悪影響が減った。なおかつ本来の滑らかで上質な変速を実現できることから、AT回帰とでもいうべきATの価値の見直しが進んでいると思われる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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