スバル車ならなんでも大好き……なハズのスバリストからも見放されたスバル車3選

現在考えれば重要なモデルもあるが当時は受け入れられず!

 スバルファンでさえ、いやスバルファンだからこそ、発売された当時は許せなかったクルマを3台挙げてみた。じつはその後のスバル車の繁栄に繋がったなど、スバル史的に重要なクルマとして高く評価すべきと後になって気がついたものの、新車で発売された当時は、いちスバルユーザーとして憤りを感じたほど安直な商品企画に思えた3台である。

1)インプレッサスポーツワゴン・グラベルEX

 1995年に発売されたグラベルEXは、90年代の前半頃、パジェロなどの本格クロカン4WD車が火をつけ、その後RAV4などの乗用車ベースの都市型4WD車が盛り上げた、アウトドア向けのモデルが大流行した現象、いわゆるRVブームのなかで産まれた。

 それまでのスバルは、レオーネ時代に育んだ正統派の4WD技術による悪路走破性能の高さによって、降雪地域などでは絶大な信頼を獲得。当時の筆者は、乗用車4WDのパイオニアとして、スバルが雰囲気重視の軟派なRVもどきをラインアップすることはありえないだろうと信じていた。三菱がギャランにGT-RVという典型的な流行後追いの安直企画車を設定したときは、鼻で笑いながら冷ややかな目で蔑んだものだ。

 しかし、あろうことかスバルも時代の流れに追従するかのように、初代インプレッサのスポーツワゴンWRXをRV車風に仕立てた派生モデルを発売。カンガルーバー的なスポーツグリルとテールゲートに背面タイヤを装着し、パッと見た目をいかにもRVな雰囲気としたが、なんちゃってRVであることは誰の目にも明らか。当時のスバルファンからは総スカンを食らい、わずか1313台で生産終了。

 筆者も憤慨したひとりだが、車高を30mm高めて最低地上高を185mmとしたところなどにはスバルらしさも感じさせた。北米では一定の人気を博し、販売は継続。その後のフォレスターやアウトバック、さらにはXVなどの現代の世界的な人気モデルに繋がったことを思うと、流行に後追いした安直企画などと酷評した、昔の自分の先見の明のなさを嘆くばかりである。

2)インプレッサスポーツワゴン・カサブランカ

 90年代の中盤、ヴィヴィオをレトロ顔に仕立てたビストロの大ヒットを皮切りに、空前のレトロ顔ブームを創出したスバル。サンバーの乗用モデルであるディアスにもクラシック顔を設定してヒットを続けたが、調子に乗ってインプレッサスポーツワゴンにもレトロ顔バージョンを設定した。

 軽自動車では成功したレトロ調仕立てのクラシック顔モデルも、WRXという硬派なスポーツモデルが人気を牽引していたインプレッサでは見事にハズれ、サッパリ売れずに終わる。自らが創出したブームに追従し、三匹目のドジョウを狙ってコケたという、スバルファンとしては嘆かわしいばかりの黒歴史となった。

その後は、自動車雑誌の過去の珍車紹介企画などに登場する頻度の高い、お笑いカー的な扱いを受け続けているが、今ではカスタマイズのネタとして一部で熱い視線を注がれているなど、評価は逆転。ごく稀に走っている姿を見かけると、幻の珍獣を発見したかのような感動を覚える。ブームは繰り返されるというから、そろそろ復刻してみてはどうだろうか。

3)インプレッサ・リトナ

 歴代インプレッサシリーズで唯一、初代インプレッサには北米市場向けに2ドアモデルが設定されていた。若者向けクーペとして日産サニー・ルキノがヒットしたのを横目に、それに追従するかのように国内市場にも廉価な2ドアモデルを導入。若い女子向けのお洒落なクーペとして発売したが、まったく振るわずにひっそりと販売を終了した。これも流行後追い型の安直な商品企画としか思えず、当時の筆者は勝手に憤慨していたが、このリトナはインプレッサの歴史において極めて重要なモデルとなる。

 これをベースとした2ドアのWRXは壮絶に格好良く、当時のWRCマシンも2ドアボディに移行。WRカー規格のマシンは、かの有名なピーター・スティーブンス氏がデザインを手掛け、WRXの人気を加速させた。そして伝説の名車「22B」の発売にも繋がったのだから、リトナは偉大な名車の母なる存在として讃えるべきクルマだったのである。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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