超辛口レーシングドライバーが認めたMTを採用する「たった2台」の市販車とは (1/2ページ)

超辛口レーシングドライバーが認めたMTを採用する「たった2台」の市販車とは

MT車の評価のポイントは操作性・操作感・耐久性の3点

 これまでにも何度か述べているが、僕はMT(マニュアルトランスミッション)派ではない。長い間レーシングドライバーとして活動してきたなかで、レーシングカーをドライブする上でもっとも障害となっていたのがシフト操作と重いステアリングの2つだったからだ。

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 とくにシフト操作には手こずった。街中で普通車を走らせるだけなら問題は多くないが、サーキットでレーシングカーを速く走らせるとMTのシフト操作には一般道のドライビングからは予想もできないような負担がかかっていた。

 その大きな要因はGフォースにある。加減速Gに横Gと常に大きなGが身体を襲う。それに抗して正確なステアリング操作とペダル操作そしてシフト操作を行うには完璧なシートホールディングが必要で、5点式以上のフルハーネスベルトで身体を強く締め上げシートに固定する必要があった。

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 コーナー目がけてのターンインではブレーキペダルを強く踏み込まなければならない。その踏力は60kg以上。制動Gが強烈に立ち上がるなか、左足でクラッチペダルを踏み込み、右足はヒールアンドトウを正確に行わなければならない。足でキックボードに踏ん張ることができなくなるのでシートベルトで身体を固定しなければならないわけだ。

 旋回中は横Gが大きくかかり、短いシフトレバーを操作するのも大変だ。その上重いステアリングで正確にライントレースしなければならないのだ。コーナー途中でシフト操作が必要な場面では片手で操舵しなければならず、シフトミスはエンジン破損に直結するから御法度だ。

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 シフトレバーは固く、グローブを2重に着けていても手の皮が剥がれてしまう。だからパドルシフトの2ペダルにパワーステアリングが装着されればレーシングカーのドライブは相当楽になると考えていた。それが常識となった現代のレーサーは幸せだ。トップカテゴリーへ上がればあがるほど2ペダルが当たり前の現代において、どうしてMTで苦労しなければならないのか理解し難い。

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 一方で一般道でも運転する楽しさ、機械を操る感覚を楽しみたいというのも理解できる。そんな僕がMTの出来具合を評価する時に重要視しているのは操作性と操作感、耐久性の3点に尽きる。

 操作性に関して言うと、よくシフトレバーは短いほうがクイックに操作できてスポーティだという意見を聞くが、それは必ずしも正解ではない。小径ハンドルの近くにシフトレバーがある場合、ショートストロークは生きてくるが、大径ハンドルでかつハンドルから遠い位置にある場合ショートストロークは操作しにくい。ステアリングから大きく手を動かし、その先でシフトレバーを短く操作するというのは感覚的なアンバランスが生じる。同じ理由でクラッチペダルのストロークが大きいのにシフトレバーだけがクイックなのも頂けない。

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 操作感はといえばシフトゲートが明確でシフトミスをしにくいこと。ギヤをエンゲージする時とリリースする時に明確な手応えの差が感じられ、レバーに機械的なキックバックを伝えずドライバーにフレンドリーであることが望まれる。またヒールアンドトウを行う時のアクセルレスポンスとシンクロギヤのマッチングも重要だ。

 よくできたMTに乗るとシフトアップもシフトダウンも、その時々に必要なギヤに自然に吸い込まれるようにエンゲージされる。シンクロギヤが摩耗したり熱で機能しなくなったりするなどは論外で、耐久性にもかかわる。

 はたしてこれほど高度な条件を満たしてくれるMT車はあるだろうか。

中谷明彦
名前:
中谷明彦
肩書き:
レーシングドライバー/2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
現在の愛車:
マツダCX-5 AWD
趣味:
海外巡り
好きな有名人:
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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