同じ車種のド新車状態なのに数%も異なることも! 個体にエンジンの「馬力」に差があるワケ (1/2ページ)

馬力は新車時でも最大10%程の差がある

 同じメーカーの同じエンジン、しかも新品同士を比べても、なんだか調子がよくって、吹けがいいエンジンと、なんとなく回転が重くて、力がないように感じるエンジンというのは存在する。いまの国産のエンジンなんて、ものすごい精度の高さで作られているはずなのに、なぜこのような差が生じるのか? それともこの差は“感じ”の違い、あくまで主観的な問題で、客観的には大差はないのか?

 結論からいうと、最新のエンジンでも、当たり・はずれはやっぱりある。たとえばノーマルエンジン同士で戦うワンメイクレースの車両だと、筑波サーキットのようなテクニカルなコースでも、エンジンの当たり・はずれで、コンマ1~2秒のタイム差はある。ストレートが長いFSWなら、その差はもっと顕著になるはずだ。

  

 シャシダイで計れば、およそ5%程度、最大で10%ぐらいの違いはあるかもしれない……。新品時から10%もパワーダウンしたら、そろそろオーバーホールを検討する人だっているぐらいなのに、最初からそんなに大差がついているとしたら納得できない、と思うかもしれないが、これは工業製品の宿命というもの。

 エンジン関係の部品点数は、およそ1万点。その一個一個に設計図があって、細かい寸法が定められている。その数字に寸分違わず組み立てられれば、基本的に差は生じないはずだが、何万台も製造する量産車のエンジンのパーツを、全部ピタッと同じ寸法で作るのは実質不可能。そこで、自動車メーカーは設計図の基準値に対し、プラスマイナスいくつまでのズレはOKという「公差」というのを設けている。

  

 たとえば、シリンダーヘッドの歪みは、最大0.2mmまで。クランクの曲がりは0.02mmまで。ピストンやコンロッドといった回転部分の重量物の重量差は、±1gまで。ブロック上面の歪みは0.1mmまで。ピストンの外径は0.01mm以内。燃焼室の容量も、バルブ径や重さも、メタルの厚さも、締め付けトルクも、みんな基準と公差があって、その公差内に収まるように作られている。

 この公差内に収めることを、「精度が高い」というわけで、そういう意味で精度の低いクルマなんて存在しない。しかし、その公差の幅がゆるいクルマ、ゆるいエンジンは、個体ごとの性能差が大きくなってしまうのだ。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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