公用車に「テスラ」をむやみに叩くべきではない5つの理由 (2/2ページ)

自治体のエネルギー政策に好影響を与える

充電インフラ整備が期待できる

 さて、EVの普及においてハードルとなっている要素のひとつが充電インフラの整備だが、こうして公用車としてEVが導入されれば市内の各所に充電器が設置されることが予想される。つまりインフラ整備が進むというわけだ。もっとも、テスラ専用の超急速充電器「スーパーチャージャー」は日本のチャデモ規格を採用するほかの電動車両とは互換性がないので、テスラ用に充電インフラを整備することは、現実的にはあまり意味があるとはいえない。逆にチャデモ規格の急速充電器であればテスラも使うことができる。国内において多数派のチャデモ規格充電器の整備を市川市が進めるのであれば、EV普及エリアとしてブランド力を高めるだろう。

電力の地産地消の象徴となる

 ところで、現在の日本における発電のエネルギーミックスにおいて火力発電の比率が大きく、EVにシフトしたからといってCO2排出量が激減するわけではないという指摘もある。ただしテスラは企業としては太陽光発電システムも提案している。風力や太陽光といった再生可能エネルギーによる発電とEVを組み合わせることで「エネルギーの地産地消」を提示することができ、そしてテスラがその象徴となり得るのであれば、公用車として導入する意義はあるだろう。

 また、市川市ではごみ焼却施設での発電も行なっている。当然、そうした電力も一部をEVに供給することはエネルギーの地産地消につながってくる。逆説的にいえば、1000万円以上もする高価なEVを導入したことで、そうした部分へ力を入れるインセンティブがわいてくることだろう。

 つまりテスラを導入することが市川市のエネルギー政策へ何らかの影響を与えるのだとすれば、その意義はあるといえる。

自動運転技術への理解が深まる

 もうひとつ、テスラのクルマは「オートパイロット」と呼ばれる先進運転支援システム(ADAS)を搭載していることも特徴だ。もちろん、市販モデルに載っている機能については自動運転レベル2相当であるが、これによって自動運転技術への理解が深まれば、地域として自動運転を認める動きが生まれるかもしれない。

 交通事故を減らすこと、物流におけるドライバー不足の解決策として期待されている自動運転について、地方自治体として積極的に推進する方向になれば、将来的にはテスラを導入したことがターニングポイントになったと評価されるかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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