ホンダが3つあるハイブリッドの2つを廃止との報道! 莫大な開発費を投じたシステムをやめるホンダの思惑とは (2/2ページ)

システムを統一することでコスト面でも有利になる

 そしてホンダは、ふたつのモーターを使うi-MMDを今後の主力ハイブリッドシステムと位置付けるのである。ただ、NSXやレジェンドなど、スポーツカーや上級車種にはSH-AWDを残すのではないか。あるいは、次は一気に電気自動車(EV)となるのか。そこはまだ見通せない。

 i-MMDのモーター走行の実力は、クラリティPHEVで示された。PHEVとしては破格のEV走行距離100kmをWLTCでも達成し、また高速道路においてもモーター走行のまま巡行できる実力を備えている。リチウムイオンバッテリーに電力が残されている間は、あたかも電気自動車(EV)を運転しているのではないかと思わせるほどだ。併用するガソリンエンジンは、当初アコードに搭載されたときには排気量2リッターだったが、クラリティPHEVから1.5リッターへと小さくなっている。

 モーターをふたつ搭載する点で、i-DCDに比べやや原価は高くつくかもしれない。一方で、この方式ではi-DCDのような変速機は不要だ。そしてハイブリッド方式を絞り込み、より多くの車種へ展開すれば数の多さによる原価低減をはかれるだろう。ホンダは2030年を目途に、世界で販売する3分の2を電動車とする計画だ。小型車へも適用可能なエンジン排気量としたうえで、リチウムイオンバッテリー搭載量の調整を行なうなどして原価に対処しつつ、モーター走行を活かした優れた燃費を達成できる可能性が高まっている。

 世界的に厳しさを増す低燃費の要請に対処しつつ、モーター走行のよさを経験する消費者が増えれば、今後、中国などで発売が予定されている小型EVに対する国内の関心も高まる期待が持てる。目前の規制対策と、消費者のモーター走行への期待の獲得と、一石二鳥のハイブリッド戦略といえるのではないか。

 世界一のエンジンメーカーであるとはいえ、ホンダの企業スローガンである「パワー・オブ・ドリームズ」のパワーは、エンジンに限定した言葉ではない。電動化された機種で夢に挑戦する姿がこれから示されることになるだろう。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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