ファンの多い純粋エンジン車は消えゆく運命? 世界中で進む電動化の黒幕は誰なのか (2/2ページ)

中国とVWグループの密接な関係も大きい

 別の視点で見ると、世界で電動化を推し進めている黒幕は中国政府だといえる。中国が2019年から施行している、NEV(新エネルギー車)に対する販売台数規制だ。これは、CAFE(カフェ:企業別平均燃費)とセットでの規制であり、通称ダブルクレジットと呼ばれる。

 自動車メーカーにとって電動化を進める大きな要因は、国や地域によるさまざまな規制をクリアすることにある。その筆頭が、米カリフォルニア州が始めたZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)。ただし、これは州法であり、ほかの10州がカリフォルニア州に準拠しているに過ぎない。アメリカでは連邦政府と州政府との足並みが揃っておらず、ZEVは全米規模の規制ではない。

 このほか、英国やフランスなどで電動化に関する目標を立てている国はあるが、中国のNEVのように足もとで実施される全国規模の法律はない。日本でも今のところ、「2050年までに新車全車を電動化」という目標は立てているものの、法的な拘束力はない。そのため、トヨタが公開している電動化のロードマップでもEVの伸びはかなり緩い。ホンダ幹部も「日本では当面、EVの販売台数が一気に伸びることはない」と言い切る。

 2018年、世界で販売されたEV台数は121万台。そのうちの約6割が中国なのだ。その中国は、VWグループにとって最重要な国。他メーカーが中国の政治的なカントリーリスクを怖がって進出しなかった80年代から、VWグループは中国での現地生産を積極的に進めてきた。当然、NEVについてもVWグループと中国政府とのつながりは強い。

 だが、昨今は米中の貿易摩擦の影響などから、中国市場がマイナス成長に入った。なかでもVWブランドのマイナス成長の度合いが大きい。VWグループと中国が実質的な黒幕である、昨今の電動化の流れ。はたして今後、どのように動くのか?


桃田健史 MOMOTA KENJI

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