ポルシェでも失敗するのか? ポルシェフリークの間でいまだに議論を呼ぶ996型ポルシェ911の中身 (2/2ページ)

エンジンを水冷化してもパフォーマンスは落ちず!

 だがポルシェは996に何もしなかったわけではない。メカニズム面においてエポックメイキングな進化を果たしていたのだ。まず911最大の特徴とも言える空冷フラット6のパワーユニットを水冷化したことだ。ボクスターですでに水冷フラット6を登場させていたため、911も水冷化されてしまうのではと予測されパフォーマンスの低下が危惧されたが、ポルシェは圧倒的な技術力を見せつけた。

 エンジンの冷却水がシリンダーヘッド下側で熱せられ上方に流れていくクロスフロー冷却を水平対向エンジンのレイアウトに上手く合わせて設計した。通常フロントに配置するラジエターはパフォーマンスが高まるほど大型となりフロント前面に大きなラジエターグリルが必要となるが、ポルシェは左右に2分割して車体前方下部に配置し低重心化とウェッジシェイプノーズを見事に実現している。多くの人がそのメカニズムに着目しなかったボクスターも996型911の登場でこうした高度な技術力が明らかとなって存在感を高められたと言える。

 RRレイアウトによる個性的で癖のあるハンドリングは911オーナーが911を乗りこなす醍醐味として運転の難しさとともに運転技術を極め達成感を与えてくれていたものだが、996型では新開発のマルチリンクリヤサスペンションを採用して誰でも操れる万能性すら手に入れていたのだ。

 こうしたことから996型911は失敗作でありながら成功作だったという微妙な評価が与えられ、今でも多くの論議を呼んでいるのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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