平均年齢70オーバー! 伝説のレーシングドライバーたちのガチレースが今年も開催

ガンさん・中島さん・関谷さん・長谷見さんらが共演

 日本のレース黎明期とも言える1960〜1970年代に国内トップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーたち。まさに近代日本のレース史に欠かせないドライバーの面々を総称して「レジェンドドライバー」と呼び、彼らをまとめるのがレジェンド・レーシングドライバーズ・クラブ(LRC会長:大久保力)だ。

 昨年から始まったレジェンドドライバーたちのレースである「AIM The Legend’s Club Cup」は、ウエストレーシングカーズが製作したワンメイク車両VITA-01(富士スピードウェイで行われている女性だけのレースKYOJO CUP用車両など)を使って行われる。今年で2回目の開催となるが、参加するレジェンドドライバーたちの顔ぶれがまた錚々たるものとなった。

 CARトップ本誌でお馴染みのガンさんこと黒澤元治(79歳)さんや中谷明彦(61歳)さんのほか、大岩湛矣(80)/岡本安弘(77)/片桐昌夫(80)/関谷正徳(69)/多賀弘明(85)/武智勇三(79)/寺田陽次朗(72)/戸谷千代三(70)/中嶋悟(66)/長坂尚樹(66)/長谷見昌弘(73)/福山英朗(64)/鮒子田寛(73)/見崎清志(73)/柳田春人(68)(50音順・敬称略)といった豪華メンバーが顔を揃える。

 このメンバーのなかには、ツーリングカーでしのぎを削ったライバル、GCやフォーミュラカーでチャンピオン争いをした相手、グループCカーで死闘を繰り広げたドライバーなどがいる。このレジェンダリーなドライバーが、一年に一度だけ富士スピードウェイに集い、ファンたちの目前で楽しいレースを見せてくれるのが、この「AIM The Legend’s Club Cup(エイム・ザ・レジェンズ・クラブ・カップ)2019」だ。

 決勝グリッドは、前から順に年齢順となりポールシッターは85歳の多賀選手。ガンさんは4番グリッドとなり、昨年のこのレジェンズレースを制している中谷さんは最年少ということで最後尾スタートとなった。

 各車1周のローリングスタート後にスタートだが、今回は紳士協定でスタート後1周目までは追い抜き禁止というルールにのっとり、レジェンドドライバーらしく全車クリーンにレースを開始した。

 ガンさんは4番手スタートながらすぐに2番手となり、必死にトップを追ったものの、スタート時に前車が加速しなかったことで後続車両に飲み込まれてしまう。一方の中谷さんは最後尾から今年も怒涛の快進撃を見せ、6周目にはこのレースのベストタイムをマーク。「上手くスリップストリームを利用できた。それでもコーナーはかなり抑えて走った」というものの終わってみれば2位の関谷選手にわずかコンマ4秒届かず3位となった。

「事前のドライバーブリーフィングでは、パナソニックゲートまでは追い抜き禁止になっていたはずなのに、スタートして1コーナーに行く手前ですでに後続車に飲み込まれた。トップはトップで見えないくらい先行していた」というコメントをフィニッシュ後に残したガンさんは、素晴らしいバトルを披露してくれたが、健闘むなしく6位に沈んだ。

 この日がラストレースとなったのが、80歳の元トムス社長の大岩湛矣さんだ。引退レースの理由を聞くと75歳以上のドライバーが受けなければならない高齢者講習の前の認知機能検査で問題があり、引っかかったのだという。

 検査は3つの項目に分かれており、ひとつ目は「時間の見当識」といい検査当時の年月日や曜日、時間を答えられるか。ふたつ目は「手がかり再生」というもので、一定のイラストを記憶した後に課題を行い(検査とは無関係)、その後に先ほどのイラストをヒントなしにいくつ覚えているのか、またヒントを元に回答するというもの。そして3つ目が「時計描写」で、時計の文字盤を描き、そこに指定された時間の針を描き込むというものだ。大岩さんが引っかかったのが「手がかり再生」だったという。検査の結果、「記憶力・判断力が低くなっている」と警察から連絡があり、専門医による臨時適性検査でも認知症の疑いが消えず、聴聞などの手続きを経て免許を返上することになったのだという。

 これらを踏まえLRC会長の大久保さんは、「永年ドライバーの奨め」を説いている。身体に異常のない健常な高齢者さえ、近親者に「免許の自主返納」を促さられる異常事態だという。あたかも自主返納だけが「美徳」のように語られる世間やマスコミの風潮に対し、レジェンドドライバーたちが立派にレースを走ることで少しでも世間の高齢者に対する風向きが変わリ、高齢者ドライバーが、世間の模範ドライバーとして認められるような活動を続けていきたいと締めくくってくれた。


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