名ばかりのSUVはいらない! レーシングドライバーが語る災害時にも役立つ本格派SUVの条件とは (1/2ページ)

近年増えている自然災害にも対応できる性能は魅力的

 第40回という節目を迎えた2019〜2020年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーはトヨタ自動車の「RAV4」が本賞を受賞した。世界的なSUVブームのなかで、トヨタ自動車が国内マーケットにも復活させたRAV4が大賞に輝くであろうことは多くの関係者が予想していたことだろう。

 今回RAV4で大きく評価された点は、全車4WDモデルとして設定されていたこと。北米や中国向けなどではFF(前輪駆動)モデルも存在するようだが、国内向けは4WDであることにこだわった。しかもHVは最高速度までリヤモーターがアシストしてくれるE-Fourとし、ガソリン仕様にも2種類のリヤデファレンシャルを用意するなど、ロバスト性(屈強性)を強くアピールしている。

 僕自身もRAV4に高得点を入れたが、最高点は「ジープ・ラングラー」に配した。それはロバスト性が他を圧倒しているからで、審査要旨のコメントにも述べているが「災害の多いこの時代において、ジープ・ラングラーの悪路走破性の高さは災害時に“命を守る行動”を力強く支えてくれる」と考えたからだ。

 スポーツカーはサーキットなど特別な場所に行かなければ、日常的にその性能を役立たせることはできない。日常のなかでは気持ちのいいドライブフィールとかスポーティなスタイリングを楽しむなど、所有する歓びを享受する範囲が限定されてしまうだろう。セダンや軽自動車は日常の道具として実用的であり必要性もある。

 一方、いつ何時、家の前のいつもの道が突然洪水に見舞われ、倒木や河川の氾濫で濁流が押し寄せるとも限らない。近年多発する「過去に前例のない」レベルの災害では、自家用車で避難中に走行不能に陥り命を落としてしまうという悲しいニュースも多く報道された。もちろんジープだからどんな災害でも平気だなどと言うつもりは毛頭ないが、一般の乗用車で避難できると判断されるような状況下でわずかなことで動けなくなってしまうような事態でも、ジープ・ラングラーなら乗り切れる可能性は相当高くなる。

 世界的にSUVが支持されているのは、世界的な異常気象が増え各地でそうした災害が多発していることに対する、ユーザーの心理的選択が働いていることもあるのではないだろうか。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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