【試乗】VW新型ゴルフ8は正常だけど大幅進化! 電動化も違和感なく使いこなす (1/2ページ)

低く精悍なスタイリングはシロッコを思い起こさせる

■かつて所有したゴルフ2は日本で使いにくいクルマだった

 私は若かりし日にゴルフに乗っていたことがあった。ちょうど30歳になったころ、駆け出しのモータージャーナリストだったけど、大先輩の徳大寺有恒先生に「君は勉強のためにゴルフを買いなさい」って言われたことがあった。当時の愛車はスバル・ジャスティ。チームスバルのラリードライバーだったので、リッターカーを所有していた。新車で買ったゴルフⅡがガレージに入った。

 右ハンドルで3速AT、だが、パワステが付いてなかったので、ハンドルは重かった。女房が2人目の子供を妊娠中で、あまりにハンドル重くて「子供が出ちゃうって」泣いていたのを思い出した。

 正直、ゲタにも使いにくいゴルフがなぜ世界の名車なのか理解できなかった。思わず徳大寺先生に「なんでこんなクルマがいいのかわかりません」って意見したことがあった。

 当時のVWジャパンの代表であったロバート・ヤンソン氏の好意で、ドイツの国際試乗会に連れて行ってもらったことがあった。その時、初めてアウトバーンを150km/hで走った。「あっ!これか、この安心感がゴルフの真髄なのか」と納得したのであった。以来、ゴルフ3、4、5、6、7とずっとゴルフの進化ぶりを、世界のファミリーカーのスタンダードとして見てきたのである。

■新型ゴルフ8はさまざまなパワーユニットを揃える

 ポルトガルで開催される新型ゴルフ8の国際試乗会に参加するために、深夜便に乗り、冒頭のように昔のゴルフのことを思い浮かべていた。新型ゴルフ8は先に発表されたEVのID.3とは対局にあるモデルだ。エンジンを搭載するプラットフォームをVWはMQB(横置きエンジンのモジュール)と規定している。一方新しいEVのプラットフォームはMEB(エンジンのないEV専用のモジュール)という。つまりエンジン車のMQBとEVのMEBが二本柱となる。その意味ではゴルフ8は最後のエンジン付きゴルフとなるのか。

 とはいえ、今回の新型ゴルフ8は電動化にも積極的で、マイルドハイブリッドと呼ばれる48Vのサブ電源を使うeTSIや、バッテリーだけでもある一定の距離を走れるプラグイン・ハイブリッド(PHV)も気になるところだ。さらにディーゼルゲート(問題)のみそぎも終わり、生まれ変わったディーゼルエンジンがどのようなパフォーマンスを持っているのか気になっていた。

 ポルトガルの首都リスボンの北200Kmくらいの大西洋に面した古都ポルト空港に着くと、すぐにゴルフ8の試乗が始まった。スタイルはスペックを見るまでもなくスポーティ。ゴルフのスピンオフモデルであるシロッコを思い出す。全長は26mm長くなって4284mm、全幅は1789mmだが、全高が36mm低くい1456mmとなっているので、より精悍なフォルムなのだ。ホイールベースと全幅はほぼゴルフ7と同じ2635mm。これがゴルフ8のスリーサイズだ。

■先進性溢れるコクピットは驚きだが使い勝手は一考の余地あり

 全長とホイールベースをEVのID.3と比べてみると面白い。ID.3は全長が4260mmでホイールベースは2765mmと長い。その比率は(ホイールベース÷全長)はゴルフ8が62%、ID.3が64%となっている。エンジンがないために、ID.3は見事なパッケージだが、エンジン車のゴルフ8も同種のライバル車と比べても、62%は立派だ。

 ルーフが低いので、キャビンの居住性が気になったが、リヤシートの背もたれを少し倒しているので、問題はなかった。

 びっくりしたのは、コクピットまわりのデザインだ。オールデジタル化されたのは良しとする。目の前にiPadが広がっている感じなので新鮮だ。だが、使い勝手はあまりよくない。タッチ式のスイッチは注視しないと使いにくい。安全運転を考えるなら、手探りでスイッチがわかる従来のアナログがいい。最近のVWグループは、アウディもタッチ式が増えている。見た目のデザインは歓迎するが、その使い勝手は必ずしも「イエス」とは言いにくいのだ。音声認識はAmazonのアレクサを使う。日本語対応はまだなので、その使い勝手はこれから判断する必要があるだろう。


新着情報