見た目は先代を踏襲しながらも中身は別物! 新型スズキ・ハスラーのチーフエンジニアにインタビュー (2/3ページ)

新型ハスラーでプラットフォーム「ハーテクト」は搭載車種が一巡

──新型ハスラーには環状骨格構造や構造用接着剤が採用されていますが、このタイミングで投入した理由は?

 竹中:もちろん基礎技術の先行開発はしていたのですが、ハスラーというクルマはデザインがもっとも重視されますので、あの形を性能のために崩したくない、崩さないということで、見えない所で何ができるのかを考えたというのがまずひとつです。

 あとは乗り心地を良くしたいということから、私が車両性能開発を20年以上担当していたので、車体開発や実験の部門と「やるんだったらここから入れていこうよ」と話をしながら、設計から製造まで全部門に協力してもらって、新型ハスラーから量産できるように準備してもらいました。

 渡邉:発破をかけたからだと思います(笑)。オンタイムのスケジュールではありませんでしたが、相当巻いて何とか間に合わせた、という所ですね。

──そういう意味では、従来通り「ハーテクト」とは言いながら、作り込みのステージが一段上がった印象を受けます。

 竹中:ハーテクトは現行アルトから始まって新型ハスラーで一巡しますから、もっとも進化した形のハーテクトにして、上屋も含めて剛性を出そうと考えて作り込みました。

 渡邉:現行軽自動車ラインアップのなかではハーテクトを採用する最後のモデルになりますので、これを幸いに次の世代を先取りできたのではないかと思います。先取り「させた」というのが正しいと思いますが(笑)。

──では、新型ハスラーを皮切りに、この新しいハーテクトを水平展開していくということですね?

 竹中:将来のことは何も言えませんが(苦笑)、基本的に今後の商品には同じような思想で。

──ホンダさんもダイハツさんも最近新しいプラットフォームを投入しましたが、スズキさんは両社に先駆けてプラットフォームを刷新しました。今後のモデルでは、今回のような大改良を施すのか、まったく違うものを導入するのか……。

 渡邉:ハーテクトは軽量化を図りながら衝突安全性能を上げることを主眼としていますが、新型ハスラーは最後の採用車種になりますので、次は性能アップを図ろうと考えて採り入れたのが、環状骨格構造や構造用接着剤、高減衰マスチックシーラーですね。軽量にしていくとどうしても板厚を薄くするという方向になりますが、そうすると弊害もありますので、その対策を新型ハスラーから打てたのが大きいですね。

──高張力鋼板の使い方は、今までと変わらないのでしょうか?

 渡邉:張力のグレードはさほど上げていませんが、適用部位は拡大していますね。

──重量は初代に対しどのように変わりましたか?

 竹中:ハーテクトの採用で車体は20kg軽くなっていますが、新しいエンジンで若干重く、CVTで軽くなり、その一方で安全装備を充実させているので、最終的には若干重くなっていますね。今回は基本的な性能を上げるために重量をかけているので、むやみに軽量化していません。

 渡邉:自動車業界全体で軽量化がひと段落して、今は反転する傾向にありますね、いくら軽量化しても装備がどんどん増えていくので。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

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ホンダS2000(2003年式)
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