【安全なクルマは大切だが運転しづらければ本末転倒】視界を悪化させる「太いピラー」がもたらす危険 (1/2ページ)

安全性やデザイン面から目視しにくいクルマが増えている

 世界的に、交通事故死者数をゼロにする取り組みが自動車メーカーで行われていることにより、車体はより頑丈になり、そのため窓枠(ピラー)も太くなる傾向がみられ、視界の悪化が続いている。

 各社とも、ピラーの断面形状や角度などの工夫により、前方視界の改善は努力しているが、それでもなお、車種によっては悪化の度合いを強めている例もある。

 また、側面衝突に対する乗員保護の向上のため、前後ドア間のセンターピラーも太くなる傾向となっており、たとえば高速道路への合流や、追い越し車線への車線変更の際に、後続車の存在を目視しにくいクルマがじつに多い。対策として、ドアミラーに後続車が迫っていることを知らせる機能が取り付けられるようになっているが、いずれにしても、目視をしにくいクルマが増えたのは事実だ。

 さらに、造形の面でも視認性や車両感覚をつかみにくいクルマが出ている。造形の魅力向上や、操縦安定性向上のため車体剛性を高める目的で、後方のピラーが太くなり、斜め後ろの視認性を悪化させているクルマが多い。そもそも、ルームミラーの半分ほどしかリヤウインドウがないクルマもある。

 外観の造形では、これもスポーティさを強調するあまり、ボンネットフードを長く見せようとしてフロントピラーの付け根が後ろ寄りとなることによって、車幅感覚をつかみにくくしているクルマもある。昨今は、車体幅が1.8mを超えるクルマが増え、2m近い場合もあり、車幅をつかみにくくなれば、よけいに車両左側のガードレールなどとの接触が気掛かりになる。

 ほかにも、よりスポーティな運転を味わわせようと、肩の張り出したバケットタイプの座席を用いたことにより、左斜め後ろの視認性を悪化させている例もある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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