【安全なクルマは大切だが運転しづらければ本末転倒】視界を悪化させる「太いピラー」がもたらす危険 (2/2ページ)

コストや販売面に影響するかどうかで装備の有無が決定している

 自動車メーカーは、安全性向上による星取りが販売につながるとして、衝突安全主体に開発を行っている。また、造形の美しさや、スポーティさが売りにつながるとして、見栄えばかりを追求し、視認性などは、カメラ映像などで補完すれば済むと考えている節がある。

 しかし、人間は情報の9割を目に依存しているのみならず、直接見ていなくても、視界が確保されていることを前提に気配を感じるということもしている。そうした人間の感性を、どこまで考慮して開発しているのだろうか? 万一の衝突事故に対処する必要は否定しないが、日々運転するクルマの視界を悪化させ、それが安全なクルマと言えるだろうか?

 どのメーカーも人間中心のクルマ開発と語る。だがそれは、自社の宣伝にとって都合の良い意味での人間中心ではないのか。

 象徴的なのが、ステアリングの調整機構であるテレスコピックを、軽自動車や小型車で採用されない例がいまだ改善されずにいる。理由は、原価(コスト)にあるという。大手自動車メーカーのある人物は、テレスコピックが売りにつながるのか? とさえ言った。

 正しい運転姿勢が取れることは、クルマの基本であり、安全の大前提だ。それをコストと、売りにつながる装備であるか否かで考える自動車メーカーの実態が明らかになりつつある。そうした思考が、衝突安全の向上や売れる造形のために視界を悪化させても平気でいる開発姿勢につながるのではないだろうか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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