社長が自らドリフト!  万人ウケ主義だったトヨタがいまクルマ好きに寄り添う理由 (1/2ページ)

トヨタの「80点主義」は万人ウケの意味ではない

 トヨタ自動車の豊田章男社長が「モリゾウ」という別名でレーシング活動をしていることは、よく知られている。そうして章男社長がハンドルを握るたびに話題となる。最初はニュルブルクリンクの耐久レースだった。いつしか国内ラリーやスーパー耐久にも出場した。はては、マツダのメディア対抗4時間耐久にもメーカーの枠を超えて参戦するなど、本当に走るのが大好きな“カーガイ”というキャラクターが確立している。

 テクニックも驚くべきレベルで、WRCマシンのデモランでは360度ターンやドリフト走行を華麗に決めるほど。そもそもワークスマシンを事もなげに走らせるだけで普通の経営者の腕ではないことは明らかだ。だからこそ、豊田章男社長はトヨタ車の味づくりにおける最後のクオリティゲートとなっている。

 こうしたモリゾウこと章男社長のアクティブな活動はトヨタのイメージを変えている。「80点主義」に象徴される手堅いクルマをつくるというイメージから脱却した感もある。もっとも、初代トヨタ・カローラが掲げた『80点主義』という言葉は、尖ったところのない万人ウケを狙ったクルマづくりという意味ではない。

「80点主義」というのは項目ごとに評価したときに最低でも80点以上であれ! という高い目標を示す言葉であって、平均点的なクルマづくりをしめしていない。たとえば「エンジンが100点で、サスペンションも100点。そのかわりに快適性は少し我慢してもらって60点」というのを認めないのが「80点主義」。100点の項目はそのままに60点の要素を最低でも80点まで引き上げるというクルマづくりの哲学である。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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