日本未導入のS209にスバリストが試乗! 「走りを極めれば安全になる」の極致 (2/2ページ)

男前な見た目からは想像もつかない乗り心地にギャップ萌え

 さらにS209にはこのEJ25に専用チューニングが施されている。吸気系には専用の大型エアクリーナーや吸気ダクトを採用することで、吸気抵抗を軽減。また専用開発のターボチャージャーを配置しているという。

 さらに大口径テールパイプを備えた専用設計の低背圧マフラーを採用。これらを専用ECUで制御することによって341馬力と、歴代のSシリーズのなかでも最高の出力を誇る。

 足まわりは265/35R19のダンロップ製ハイグリップタイヤにBBS製鍛造アルミホイールを組み合わせ、専用開発のビルシュタインダンパーや専用コイルスプリング、強化ブッシュがこの幅を拡げたボディに収められている。メカメカしく存在感のあるオーバーフェンダーがまた、たまらない。

 ストラットタワーバーやフロントのドロースティフナーと、STIのコンプリートカーでお馴染みのフレキシブル系パーツも健在だが、注目すべきは後席とトランクをつなぐボディ境界部に設置されるリヤのドロースティフナーだ。いかにも剛性が高まりそうな装着位置ではあるが、世界的なラリースト、新井敏弘選手によると、剛性が上がっているだけではなく応答性が向上しているという。このパーツによってステアリングの操作がリヤのタイヤに早く伝わり、リヤの安定性が上がるのだそうだ。関係者からは「リヤドロ」と呼ばれ、今後カタログモデルのオプションパーツとしての導入も予定されている。

 ステアリングにはパドルスイッチ。なぜMT車なのにパドル? じつはそのスイッチ、熱による性能低下を抑えるインタークーラーウォータースプレイのものだという。

 撮影も順調に進み、有り難いことにスタッフもこのクルマを試すチャンスを得た。私もこのクルマを試せるのだ! なんという僥倖! しかしながらS209に乗れるという感動のあまり左ハンドルであることを忘れていた。思えば生まれて初めての左ハンドルかつMT。そんな初体験のパートナーがS209であるという感激もさることながら、実際動かしてみると、慣れるまでは脳トレ状態……。

 それはさておきこのクルマ、太いタイヤなどからは想像もつかないほど乗り心地が良く、運転しやすいのだ。常にギャップやアンジュレーションに晒される群サイにおいて、サスペンションやタイヤの縦バネも含めて動きはしなやか、荒れた路面でもタイヤがシッカリと接地しているのがわかる。それでいながらハンドリングはシャープで、思ったとおりに曲がるのだ。じつに懐が深いクルマである。

 徐々にペースを上げていく私の右足の動きに合わせて響く不等長サウンドに呼応するように、500ccの余裕か、EJ20よりも低速トルクに溢れ、スムースに加速する印象。試乗前にはカリッカリのスーパースポーツをイメージしていたのだが、走りは意外にもジェントルな印象を受けた。聞けばEJ20に対してEJ25はアメリカの環境に合わせ、ターボのきき始めが高回転からなのだそうだ。

 見た目やその内容から走りにはかなり本気であることがうかがえ、初めは私に操れるのか不安だった。しかし左ハンドルに慣れてからはムダな神経を使わず、純粋に運転を楽しむことができたのだ。なるほど「走りを極めれば安全になる」というスバルの思想はこういうことか。

 スバル車はアメリカでも人気を誇り、2019年の新車販売台数は70万台を超えた。アメリカではスバルファンやスバルオーナーの所有車に愛情を込めて「SUBIE(スビー)」と呼ぶ。そんなアメリカのスビーたちからは以前から「Sシリーズ」が欲しいという声が多かったと言い、今回、彼らの永年の夢が叶ったのだ。国境を越えてスバルを愛する人たちと語り合い、共感し合えたら素敵じゃないか。S209の素晴らしさを知り、アメリカ専売であることに不満を抱いていたことを深く反省、考えを改めたのであった。

 そしてスバルの最新の「市販車最高峰」の走りを味わった今、絶えず高まるスバル/STIの技術がこれからも国内外の現行車に反映されていくと思うと、スバル車の今後に期待せずにはいられない。


乾ひかり INUI HIKARI

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愛車
スバル・インプレッサWRX STI(GRB)
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ひとりドライブ旅、読書、音楽鑑賞(ライブ参戦)
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