2018年から新型車が出ていないのにスバルの販売台数が落ち込まない理由 (2/2ページ)

毎年の「年改」で商品力を維持している!

 それは「年次改良」だ。スバリストと呼ばれる熱心なファンの間では「年改」と略して呼ばれることも多いが、とにかくSUBARUのモデルは毎年しっかりと改良することで知られている。デビュー年次をA型、その後年改を受けるたびにB型、C型……と呼ばれるが、スバリストのなかには「熟成が進み、4年目のビッグマイナー版といえる『D型』がベスト」という人もいるくらいだ。

 いずれにしても、毎年進化することがわかっているのだから、ファンのほうもじっくりと腰を据えてタイミングを計ることができる。他社もSUBARU同様にこまめなマイナーチェンジをするようになっているが、SUBARUの場合は年改をすることが前提として認識されているのでユーザーがネガティブに思うことはないが、他社では「すぐにマイナーチェンジをするなんて」と失望感を生んでいるという。こうした違いはブランドの持つ伝統の違いゆえだろう。

 さて、SUBARUのクルマには年改以外にも商品性を維持する魅力がある。それが水平対向エンジンを使ったことによる「シンメトリカルAWD」と呼ばれる左右対称なパワートレインの配置だ。好バランスのレイアウトが生み出すハンドリング、素直な運動性能は経年劣化しない価値を提案。SUBARUのブランド力を生み出す源泉となっている。

 水平対向エンジンを基本としたシンメトリカルAWDだけがSUBARUのコアテクノロジーではない。さらに「アイサイト」と呼ばれるステレオカメラを軸としたADAS(先進運転支援システム)もSUBARUのクルマを積極的に選ぶ理由となっている。

 10年前に掲げられた『ぶつからないクルマ』という自信満々のキャッチコピーはインパクト大だった。そして、アイサイトの真骨頂といえるのがACC(追従クルーズコントロール)。単に先行するクルマについていくだけであればどのメーカーも大差ないが、加減速における違和感のなさ、ドライバーが任せられると感じられる信頼感は、まさしく一日の長がある。先行していたからこそ、スペックから期待する以上のADAS性能を持つ。とくに最初のアイサイトツーリングアシストによる操舵アシストは秀逸だ。クルマが上手な運転を教えてくれるような感覚もあり、信頼できるパートナーといった気持ちにもしてくれる。

 このように、シンメトリカルAWDとアイサイトといったSUBARUのコアテクノロジーには、独自に極めてきた歴史があり、他にはない味がある。その魅力に触れてしまうと、他に比べるものはなくなるというスバリストの言葉にも納得できる。コアなファンにとっては変えることのできない独自のテクノロジーによってライバル不在といえる状況を生み出しているからこそ、SUBARUのクルマは新車効果が薄れてしまうタイミングになっても、魅力が色褪せず、商品力を維持できるのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
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