クルマ好きでも難しい! エンジンの「パワー」と「トルク」を分かりやすく解説【清水和夫のホントのトコロ】 (1/2ページ)

力・仕事・仕事率・エネルギーの理解が重要

 専門家でもパワー(馬力)とトルクを正しく理解することはむずかしい。そこにはかなり専門的な物理学の知識が必要だからだ。最近のクルマの新車カタログを見ると、パワーのところにPS(馬力)とW(ワット)という2つの単位が書かれている。一方でトルクはkg・m(キログラム・メートル)とNm(ニュートン・メートル)という2つの単位がでてくる。従来はパワーはPS(馬力)、トルクはkg・mを使ってきたが、数年前から正式な単位としてはW(ワット)とNm(ニュートン・メートル)が国際的に統一されている。

 しかもEVのモーターは馬力(PS)は使わずに、W(ワット)を使うし、ハイブリットの場合は、エンジンとモーターが合算される領域があるので、W(ワット)で統一したほうが、分かりやすいだろう。ここでは普段あまり聞き慣れない単位を分かりやすく説明することにしよう。

 試乗記などのリポートでは自動車のエンジン(モーター)の性能を示す単位として、馬力(パワー)が一般的に使われているが、最近はトルクという言葉も見られるようになってきた。「このクルマ、パワーがあるな!」とか「このターボは低速のトルクが大きい」とか。リポーターは感覚的にパワーとトルクを使い分けているが、物理的には異なる単位なのだ。

 たとえば「500馬力」と書かれると、凄いパワーだ! とイメージできるが、370kWと書かれても、イメージできない。日頃から「100馬力=74kW」という換算式を覚えておくといいだろう。

 パワーとトルクの違いを理解するには、基本となる力・仕事・仕事率・エネルギーという専門的な言葉の意味をしっかりと理解することが必要だ。エンジンはガソリン(ディーゼルでは軽油)を空気と一緒に燃やして、その熱エネルギー(シリンダー内の圧力)でクランクシャフトを回して、動力を得る。エンジン式発電機ではエンジンの回転力でモーターを回し、電気を発電する。そうしたエンジンやモーターがタイヤを回すことで、クルマは動く。最終的にはタイヤと路面の接地力によって、駆動力に変換される。

 まず、一般的に使われている力について考えてみよう。日常的にはモノを持ち上げたりするときの「力」はイメージしやすい、筋肉が力を発生するのだ。これを物理学的に定義すると、力(フォースであって、パワーではない)とは、モノの状態を変化させる原因であり、その大きさを表す物理量である。力はパワーではないということを理解してほしい。その力が連続してある重さのモノに加えられ、どのくらい移動したのかを考える時に仕事という概念が使われる。ちなみにトルクとは仕事のことを指すが、回転するエンジンの場合に限って、エンジンの仕事をトルクという。詳しくは後ほど。


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