なぜSUVじゃない? いまキャンプ場が軽自動車で賑わうワケ (1/2ページ)

車中泊に対応するシートアレンジも可能な軽自動車も存在

 アウトドアライフを楽しむのに、本当に向いているのはどんなクルマだろうか? 多くの人、いや、アウトドア経験の少ない人だと、まずは大型SUV、大型クロスオーバーSUVを想像するはずだ。

 しかし、東京都内の観光地的なキャンプ場のように、幹線道路に面した、それこそ手ぶらで行けるようなライトな商業キャンプエリアならともかく、深い森のなかや山奥にある、本当の大自然に囲まれたキャンプ場は、幹線道路から、それは、それは狭い、対向車とすれ違うのも大変な未舗装の林道などを突き進まないとたどり着けないことがある。

 もっとも、そうしたシチュエーションにあるキャンプ場へのアクセス路は、狭い道とはいえ、極悪路ではないケースも少なくない(整備されているはず)。だって、道なき道を行くようなキャンプ場だと、「悪路上等」以外のお客さんが敬遠し、商売として成り立たないからだ。

 なので、キャンプの達人のなかには、あえてコンパクトかつ、積載力のあるクルマを選んでいたりする人がいる。小さいクルマではキャンプ用品が積み切れないのでは? と思うのは素人。キャンプの達人は、豊富な経験から本当に必要なアイテムしか持っていかず、荷物を不自由のない範囲で最小限にするテクニックを知り尽くしているからだ。これは、災害時の非常持ち出しリュックになにを詰めるか? とも共通する引き算のテクニックでもある。

 さて、そう考えると、キャンプ場へのアクセスも事前に調べて、本格的なクロスカントリーモデルでしか立ち入れないわけではない(道やキャンプエリアが整備されている)……となり、荷物も吟味して不自由のない範囲で整理し、しかし、キャンプ場への最終的なアクセス路がけっこう狭い……となれば、むしろコンパクトなクルマでも十分にキャンプを楽しめることになる(1~2名乗車の場合)。

 ただし、アクセス路やキャンプ場内が未舗装であれば、少なからず凸凹もあるだろうし、川辺であれば、ゴロゴロした石の上を走る可能性もある。また、天候の変わりやすい山間部では突然の大雨に見舞われ、路面状況が一気に悪化する事態を考慮すれば、コンパクトなクルマでも、最低地上高に余裕がある4WDが望ましいのは当然だ。

 狭い道もスイスイ走れ、すれ違いも楽なコンパクトなボディサイズで、キャンプに向いている最低地上高の余裕と、万一、車内で就寝せざるを得ない状況下での車中泊も可能なクルマの筆頭が、意外にも軽自動車だ。1名または2名でのキャンプ限定だが、たとえば”遊べる軽”というコンセプトを発案した、ワゴンとSUVを掛け合わせたようなスズキ・ハスラーがその代表格。軽自動車ゆえ車幅は5ナンバー乗用車の車幅1695mmよりはるかに狭い1475mm(軽自動車の規格幅上限)。

 しかし、最低地上高は本格SUVに迫る180mmを確保し、なおかつキャンプのアクセスにも最適な4WDの場合、ヒルホールドコントロール、ヒルディセントコントロール、グリップコントロール、そして新型はスノーモードまで完備し、悪路、急坂、雪道を含むあらゆるシーンに対応してくれるのだ。

 極めつけは、前席まで倒すことで、大人でも真っすぐ寝られる、車中泊対応のシートアレンジを実現していること(前席に大きなサイドサポートがないのはそのため)。ハスラーのアクセサリーカタログを見れば、キャンプ、車中泊用のアイテムが多数そろっているのも、キャンプに向いているクルマであることの確固たる証拠だろう。

 ちなみに、後席格納時の荷室は、フロア奥行約970~1130mm(後席スライド位置による)、幅約1090mm、天井高約860~900mmと大容量。また、前席まで倒したフラットアレンジを行えば、ベッド長は最大2040mmに達する。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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