【今さら聞けないタイヤの基礎知識】「低燃費タイヤはナゼ燃費がいい?」素朴な疑問からヨコハマタイヤがお答え! (2/2ページ)

梅雨など雨が多く降る日本ではウェットグリップ性能も大事

高野:確かに、トレッドパターンだけ見てもまったく異なりますね。スポーツタイヤは溝が大きいなど、刻み方が特徴的で視覚的な良さもあります。さらに最近は、低燃費タイヤもミニバン用やSUV用などに分かれて多様化していますね。

栗山:ミニバンやSUVなど重量のあるクルマ用のタイヤでは、ふらつかないための工夫を施しています。転がり抵抗を減らす方法のひとつとして、部材を軽くすることがありますが、ゴムや有機繊維、スチール、カーカスなどの構造を簡素化すると剛性が出なくなるので、巻き上げ部分を高くして剛性を保つ工夫を施しています。骨格はしっかり確保して肉を削ぐイメージです。これにより、低燃費とふらつき防止をバランス良くできるのです。

高野:そういった工夫の積み重ねにより、今は日常域で低燃費タイヤに対する不満はほぼ感じなくなりました。低燃費タイヤのネガ要素は完全に解消されているとみて良いのでしょうか?

栗山:2010年から実施されたラベリング制度により、転がり抵抗とウエットグリップ性能の評価がわかりやすく表示されるようになりました。現在、弊社の低燃費タイヤは両方の性能で最上級の評価を得ている製品が多くなり、転がり抵抗とウエットグリップ性能は高い次元で両立できているとご理解いただいて問題ありません。もちろん、今後もさらに高いレベルで両立させられるよう、日夜開発に取り組んでいきます。

高野:ラベリング制度について簡単におさらいすると、転がり抵抗はタイヤ単体の転がりやすさ、ウエットグリップ性能は濡れた路面での制動距離の数値ですよね? 個人的に気になるのはウエットグリップ性能で、a/b/c/dの4段階がありますが、それぞれの性能差はどのぐらいなのでしょう?

栗山:制動距離の数値として、最上級のaからアルファベットが進むごとに、およそ10%ずつぐらい下がるイメージです。車体の全長1台分程度の差になります。

イラストはウェットグリップ性能aとcでの制動距離の違いを表したイメージ

高野:aとcではクルマ約2台分ぐらいの差になると思うと、かなり大きなものですね。日本は雨が多く近年は梅雨の時期が長くなっていますし、より重視すべき部分と言えますね。あと、最近の低燃費タイヤは長持ちする印象も強いですが、転がり抵抗が減ると摩耗しにくくなるメリットがあるのでしょうか?

栗山:転がり抵抗と耐摩耗性能も、じつは相反する性能なので、転がり抵抗を減らせば同時に摩耗も減るというわけではありません。溝の深さやトレッドパターンの剛性など、さまざまな要素で耐摩耗性能を高くしてバランスをとっています。

高野:スムースに転がるタイヤは摩耗しにくいと想像していましたが、だからと言って耐摩耗性能も同時に高まるのではなく、摩耗はまた別の性能なのですね。つまり低燃費タイヤは、転がり抵抗/ウェットグリップ/対摩耗性能など、本来は両立させるのが困難な要件を高い次元で満たしている高度なタイヤなのだと実感しました!

 聞けば聞くほど、最近の低燃費タイヤの総合性能の高さには感心させられるばかり。タイヤとしての基本的な構造はほかのタイヤと異なるのかどうかなど、さらに詳しく知りたくなります。引き続き、横浜ゴムの栗山さんにお話を伺いたいと思います。次回もご期待ください!


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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