ライバルの「マネ」はしない! あえて「ハズシ」で勝負をかけた国産車3台の成功と失敗 (2/2ページ)

挑戦が功を奏した商用車も!

3)ホンダN-VAN

 1BOXやトラックのような商用車というと後輪駆動がスタンダードだ。重い荷物を積むとリヤ荷重が大きくなり、極端にいうとフロントタイヤは浮き気味になる。そうした状態において、しっかりと駆動力を伝えるには後輪駆動が向いているため、どうしてもFRが主流となっている。

 それは軽商用車でも同様で、軽トラックはすべてリヤ駆動であるし、スズキ・エブリイ、ダイハツ・ハイゼットカーゴという軽1BOXバンもセミキャブオーバーのFRレイアウトとなっている。

 そうした市場に一石を投じるべく誕生したのがホンダN-VANだ。それまでホンダの軽1BOXバン「アクティバン」はMRレイアウトでやはり後輪駆動となっていたが、N-VANはその名前からもわかるようにN-BOXのメカニズムを利用したキャブオーバーバンで、基本はFFレイアウトとなっている。じつはダイハツにハイゼットキャディーというFFベースのキャブオーバーバンも存在しているがハイゼットキャディーの積載重量は駆動方式を考慮してか150kgとなっているのに対して、N-VANは350kgという軽商用車の最大積載量を可能としている。

 実際、最新のFF車のトラクション性能を知っている人からすれば後輪駆動でなければ十分なトラクションが確保できないというのが昔話なのは自明。むしろ、リヤデフが不要になるため荷室の床を低くできるというメリットがFFベースの商用バンにはある。事実、荷室床面の地上高を比べると、N-VANが525mmなのに対して、エブリイは650mm、ハイゼットカーゴは635mmとなっていて、N-VANの優位性は明らかだ。

 というわけで、比較的ベテランユーザーの多い軽1BOX・軽バン市場において変革的なモデルであるN-VANは受け入れられないのでは? という声もあったが、従来モデルのアクティに比べると、販売台数は激増。スズキ、ダイハツというライバルを追い越すほどではないが、過去の実績を考えると善戦しているというのが実情だ。

 ちなみに、今年の上半期(1月~6月)の販売台数(全国軽自動車協会連合会調べ)でいうと次のようになっている。

 1位 ダイハツ・ハイゼットカーゴ:3万280台

 2位 スズキ・エブリイ:2万5837台

 3位 ホンダN-VAN:1万6636台

 2020年のデータではハイゼットがリードしているが、新型コロナウイルスの影響もあって、この数字だけで判断するのは難しい。そこで2019年の同じく上半期で比べると3台の販売台数は次のようになる。

 1位 エブリイ:3万7767台

 2位 ハイゼットカーゴ:3万6292台

 3位 N-VAN:2万7285台

 いずれにしても、スズキとダイハツの二強だった市場にホンダが食い込んでいることがわかるだろう。N-VANが時代を、市場を変えたとまではいえないまでも、当初の予想以上に健闘していることはまちがいなく、変わり種を超えた存在となりつつある。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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