世界中で電動化の大きな波! 本格「ハイブリッド&EV」を持たない軽自動車中心の「スズキ&ダイハツ」の行方 (2/2ページ)

低価格商用EVの普及が軽自動車の電動化を加速させるのでは

 スズキやダイハツに限らず、軽自動車に力を注ぐ自動車メーカーがいまもっとも目指すべきは、ハイブリッド化ではなくEV化である。生活を支える軽自動車にとって、ガソリンスタンドの減少により利用の負担が高まっている。給油のため、何km、十数km、数十kmも遠くまで行かなければならない地域が出ている。

 一方EVなら、自宅で充電すれば毎日満充電で出かけられる。また、日常の暮らしを中心に利用される軽自動車であれば、通勤などでも一充電でほぼ往復できるだろう。勤め先に200Vのコンセントを設けてもらえれば、もはや何の心配もなくなる。しかも、エンジンオイル交換が不要であり、回生ブレーキがあるからブレーキパッドも長持ちするなど、EVになれば保守・管理費を低減できる。

 課題は、なお割高といわれるリチウムイオンバッテリーの原価だ。しかしこれも、各メーカーが一斉にリチウムイオンバッテリーを採用しはじめれば、市場の3割前後を占める軽自動車の数の論理によって低減していくことができるのではないか。またEVであれば、必要な標準装備もガソリンエンジン車と異なり、ゼロから必要な装備を洗いなおせば、不要な装備分の原価は落せる。

 私が提唱するのは、「100km100万円軽商用EV」の実現だ。原価にもっとも厳しい商用車で徹底した原価低減を行い、そこに付加価値を加えて乗用軽EVにつなげていく。

 そこは競合メーカー間での競争ではなく、消費者のための挑戦だ。社会情勢を正しく見極める力があれば、協調と競争の棲み分けによる調和した軽自動車戦略を通じ、不可能ではないはずだ。それでなければ、軽自動車の未来は拓けないと思う。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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