「ハチロク」に繋がる影の名車「ナナイチ」! アラフィフが熱狂したTE71型レビン&トレノとは

角目二灯の3ドアハッチバッククーペとして人気が高かった

 かつてシビックとともに“テンロク”(1.6リッター)クラスでしのぎを削った、トヨタのレビン・トレノ。

 初代のTE27から7代目のAE111まで、カローラベースのコンパクトなボディに、パワフルなDOHCエンジンを積んだモデルとして、多くの走り屋から愛されてきた車種で、なかでも初代のTE27と、4代目のAE86(いわゆるハチロク レビン・トレノ)は名車として知られ、ファンも多いモデルだ。

 このTE27とAE86以外からもう一台、レビン・トレノらしいクルマをピックアップするなら、3代目のTE71にスポットを当てたい。

 TE71は1979年に登場。ベースは3代目カローラで、TE27から続く、DOHC 2バルブの2T-Gエンジンを搭載。先代の前期モデル(キャブレター仕様)は、昭和50年排出ガス規制をクリアできずに、256台で生産終了……。後期に電子制御燃料噴射(EFI)+触媒を使うことで、昭和51年排出ガス規制をクリアし復活するし、そのEFIの2T-GEU型エンジンを継承。

 さすがに設計の古さは否めなかったが、圧縮比は8.4とわりと高く、最高出力は115馬力/6000rpm、最大トルクは15.0kgm/4800rpmとまずまずで、975kgの車体の軽さを生かし、けっこうパワフルな走りを楽しめた。

 またシャシーは、このTE71から新設計のものが投入された。フロントサスはストラットのままだが、リアはリーフリジッドから4リンク・コイル+ラテラルロッドに進化。

 まだ独立懸架ではなく、相変わらずリジッドアクスルのままではあったが、FRらしく、アクセルで姿勢をコントロールするにはもってこいのサスペンションで、LSDを入れて、峠を攻めると最高にご機嫌な一台だった(前後にスタビライザーも装着)。

 ステアリングギアレシオは16.1と当時としてはクイックで小気味よく、四輪ディスクブレーキというのも、スポーティーな要素。

 角目二灯の精悍な顔立ちに、直線が基調の3ドアハッチバッククーペのボディはデザイン的にもまとまっていて、茄子紺のボディカラーに、オレンジのストライプという組み合わせも人気があった。

 新車価格で134万円というプライスも魅力だったが、1980年代後半になると、ジムカーナ・ラリー・ダートラ系をメインに扱った雑誌の個人売買欄に、多数のTE71が10万円前後の価格で売りに出ていた! このTE71か同じ価格帯のKP61スターレット(最後のFR)やランタボ(ランサーターボ)で走り屋デビューする若者や学生が多かった。

 そういう意味で、このTE71に育てられたアラフィフドライバーはたくさんいるはず。

 エンジンもパワフルではなかったが、4バルブになったAE86の4A-Gよりも“トルク感”はあり(速さでは負ける)、踏んでいって面白いエンジンだったし、基本的にタフだった。

 シャシー・ハンドリングはバランスがよく、AE86もほぼそのままTE71のシャシーを引き継いだ形なので、TE71がなければ、AE86伝説も生まれなかったに違いない。

 大きなレースでは、スーパーシルエットにトムスからちょろっと出たぐらいしか出番がなかったが、FRの傑作シャシーに、トヨタの名機2T-Gを積んだ最後のモデルとして、いつまでも記憶に残る一台だ。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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