クルマの進化で街の「整備工場」が悲鳴! 4月に変更された「特定整備」の中身とは

昔ながらの小さな整備工場が苦労する可能性

 ディーラー、街の整備工場、用品店のピットなど、クルマの整備士という“プロフェッショナル”がいるところとしてお馴染みなのが認証工場だ。認証工場であれば、難易度や危険度が高い「分解整備」を行うことができ、入口のところに黄色い認証の証が掲示されていたりもする。分解整備と聞くと、ブレーキをバラバラにすることができるというイメージだが、じつは原動機/動力伝達/走行装置/操縦装置/制動装置/緩衝装置/連結装置の7つの分野にわたる。つまりクルマの根幹になる部分を整備することが分解整備となる。

 ちなみに素人は手を出してはダメ、という声をよく聞くが、自分で行うのは問題なく、料金を取らなければ他人のクルマでも分解整備は行ってもかまわない。点検整備は本来ユーザーが行うもので、プロはそれを代行するという存在となる。もちろん個人でやるにしても、それなりの技術と設備があることが前提だが。

 その「分解整備」が、2020年4月1日から「特定整備」に変更されているのをご存じだろうか。これはただの名称変更ではなく、内容が大きく変わっていて、簡単に言ってしまえば最近の電子制御を用いた安全装備への対応が追加されている。これは電子制御装置整備と呼ばれ、具体的には自動ブレーキやレーンキープなどの装置の取り外しや、作動に関わる部分の整備。センシング用カメラの脱着や調整。さらにはその周辺部分の整備や脱着に対して、知識や設備が整っているかが問われるようになった。整備工場の対応としては、整備場所や車両置き場の確保。スキャンツールや水準器なども必要となる。

 資格も必要で、講習を受けないと特定整備が可能な認証工場にはならないため、多岐に渡っての対応が必要ということになる。ただ資格については4年間の経過措置があって、その間に取得すればいいし、2020年3月31日までに対象の車両を整備したことがあれば4年間は取得していなくても問題はない。

 ただ気になるのは、街の整備工場がどうなってしまうかということ。年配の整備士が近所の人たちの足グルマを地道に面倒見ているようなところは減ったとはいえまだまだ多く、地元にとってはなくてはならない存在だったりもする。そんな整備工場に特定整備の資格を取得しろと言われても知識や設備の面で酷だし、さらには需要としても意味がないような気もする。

 じつはいわゆる従来の分解整備だけしかしないとすれば、新たに認証を取る必要はなく、今まで通りの体制や設備で認証工場として営業はできるので問題はない。つまり最新の装置を整備しない(するつもりがない)のなら、なにも変わらないということだ。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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