「据え切り」は本当にやってはいけないのか? 昔からある「噂」の真相とは (2/2ページ)

自動車メーカーは据え切りの耐久テストを行っている!

 メーカーでは、6万回以上の据え切りテストを行っていて、トラブルがないことを確認して出荷しているほど。単純計算で、1日16回の据え切りを10年間毎日続けても問題ない耐久性があるわけで、1日数回程度の据え切りでは、メカニカル的な支障は無視していいレベルといっていいだろう。

 もちろん電動パワステだって、大きな負荷はかかるし、消費電力も増えるが、フェールセーフ機構もあるので、過度のストレスがかかれば、パワステのアシストが一時的に働かなくなるようにして、故障を防ぐ仕組みもある。

 取扱説明書にも「据え切り禁止」という注意書きを見たこともないので、タブー視する必要はないはずだ。

 タイヤの摩耗に関しては、もちろん多少の影響はある。停止状態でハンドルを切るということは、接地面の1点だけ地面にこすられることになるし、前輪にはキャスター角がついているので、ハンドルを切るとタイヤは内側に傾く(外輪がネガティブキャンバー、内輪がポジティブキャンバーになる)。こうするとタイヤの角だけで荷重を支えることになるので、タイヤには辛い。結果として偏摩耗につながることがあるが、スキール音が出るようなアンダーステアなどに比べれば、はるかに影響は少なく、定期的にローテーションを行えばフォローできる範囲といえる。

 だからといって、もちろん据え切りを積極的に勧めることはできないが、タブー視するほどのものでもない。

 食べ物でいえば、カップラーメンは身体に悪い、ポテトチップスは身体に悪い、甘いものは、お酒は……といったレベルで、クルマを大事にしたい気持ちがある人は、極力据え切りを避けたほうがいいだろう。

 ハンドルを切るときは、AT車のクリープ現象ほどの微低速でもいいので、できるだけクルマを前進(後進)させながらハンドルを回した方が、クルマとタイヤに優しい運転になるということを覚えておこう。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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