文化の違いも原因のひとつ! 国産車のシートが輸入車に比べて「チープ」に感じるワケ (2/2ページ)

シエンタの2列目席とFUNBASEの後席はかけ心地に差がある

 人気のコンパクトミニバン、シエンタには、今では3列シートのシエンタと、2列シートのFUNBASEがラインアップされている。が、シエンタの2列目席とFUNBASEの後席を座り比べてみると、FUNBASEのほうがかけ心地がいい。理由は、3列シートのシエンタの場合、3列目席を2列目席下にすっきり潜り込ませるアレンジを組み込んでいるなど、2列目席のクッションに厚みを持たせにくいからのようだ。実際、両車の2列目席の骨格は別物で、後席のかけ心地に優れるのは、3列シートのシエンタほどの凝ったアレンジを持たないFUNBASEのほう、というわけだ。

 具体的にはクッション構造が異なり、シエンタ=3列シートの2列目席は鉄ワイヤでクッションパッドを受け、ウレタンフォームのたわみでクッション感を出す一方、FUNBASEの後席は伸縮スプリング付ワイヤでクッションパッドを受ける、より座面がたわみやすくソファ感覚で快適に座れるコンターマット構造を採用しているのである。

 国産車には、かけ心地そのものだけでなく、運転席のサポート性がプアなクルマも少なくない。しかしそれは、確信犯的なケースもあったりする。シートのかけ心地そのものは文句なしのハスラーなど、2列シートのクルマで車中泊対応が考えられているクルマは、前後席フラットアレンジで、できるだけ凸凹のないフラットなスペースを作り出したい。そのため、前席のサイドサポート部分を大きく張り出すような形状にはしたくないのである。まぁ、車中泊のしやすさを機能として取り入れているようなクルマのユーザーに、サイドサポート性をことさら求める、山道をガンガン飛ばすような人はまずない……と言われてしまえば、それまでですが。

 ちなみに国産車の名誉のために言っておくと、マツダ車のシートへのこだわりはすでに説明済みだが、最近のトヨタ車に、好みにもよるだろうけれど、背中を包み込むような心地よいかけ心地&サポート性を持つシートが増えてきているのもまた事実である。

 繰り返すけれど、シートは座る人との相性があり、他人が最高にかけ心地がいいと感じても、自身にぴったり、しっくりくるかは別問題。最近、進化著しい国産車のシートも、できればショールームで短時間座るだけでなく、ある程度の時間、距離を試乗して、走行性能とともに、重点的にシートの座り心地をチェックすべきだ。クルマに乗っている最中、つねに全体重をあずけ、快適で安全な運転、正しく疲れにくい運転姿勢を決定づけてくれるのが、シートなのである。それが気に入らないとすれば、間違ったクルマ選びということになる。

 そうそう、ファブリックシートのクルマに試乗してかけ心地に満足し、購入を決めたとして、しかし注文するのは思い切って(未試乗の)レザーシート……という買い方は、けっこう賭けかも知れない(とくに体重の軽いドライバー。もちろん、満足できるケースもある)。

 国産車のシートはプア……そんな印象をいつまでも引きずるより、国産車を選ぶとしても、”自身に合うシートを探す”クルマ選びという考え方にシフトすれば、クルマ選びの選択肢が広がり、またより快適で充実したカーライフを送れるに違いない。それでも国産車に気にいったシートが見つかれなければ、椅子文化の長い輸入車をチェックすればいい。国産車、輸入車のどちらにしても、今のボクのように、かけ心地に大満足できるシートを持つクルマに出会えたとしたら、それは、それはハッピーではないか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

新着情報