自社開発をやめても販売は続ける! マツダやスバルがOEM軽自動車を扱う「止むに止まれぬ」事情 (2/2ページ)

軽自動車をやめると普通車の顧客をも失う可能性!

 ただし販売まで含めて軽自動車市場から完全に撤退すると、今までの顧客を失う。点検や車検、保険などの仕事も得られない。今は車両の販売に基づく利益が減り、各種サービスの重要性が増したから、車検や保険は失いたくない。そこで顧客を繋ぎ止めるためにOEM車を扱う。

 とくに軽商用車では、複数の車両を購入する法人も多い。その顧客を失うのはアフターサービスも含めて痛い。また仮にマツダが軽商用車の取り扱いを終了して顧客がスズキ・エブリイに乗り替えると、同じ法人が所有する営業車のMAZDA2まで、スズキ・スイフトに変わる心配も生じる。

 つまりクルマの販売会社にとって、自社の顧客はなるべく他社のセールスマンと接触させたくない。顧客の流出を防ぐため、軽自動車の開発や製造を終了した後も、OEM車の導入でラインアップの穴を塞ぐわけだ。

 一方、日産とトヨタは、以前は軽自動車を扱っていなかった。しかし近年では軽自動車の販売比率が急増して、小型車から軽自動車に乗り替えるユーザーも増えている。また小型/普通車のユーザーが、セカンドカーとして軽自動車を併用することも多い。そこで軽自動車のOEM車を扱うようになった。

 日産は2002年にスズキMRワゴンのOEM車をモコの名称で導入した。この背景には、日産車ユーザーの22%が軽自動車も併用しているデータがあった。日産が自社で軽自動車を扱えば、ビジネスに結び付けられる。当時は軽自動車の売れ行きが急増して、国内の新車市場に占める軽自動車比率も、従来の20%台から30%を超えるようになった。そこで日産はスズキ製の軽自動車を導入した。

 ただしその結果、日産では国内で軽自動車の販売比率が増え続け、2020年には43%に達した。日本のユーザーのために開発された軽自動車は、販売力も強く、小型車の顧客を奪っていく。これも近年、日産の新型車が滞った原因のひとつだ。OEM軽自動車の難しさも明らかになった。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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