より実用的な指標に変わった! かつてクルマ好きを熱狂させた市販車の「ゼロヨン」タイムが消えたワケ (1/2ページ)

0〜400m加速タイムを通称「ゼロヨン」と呼んでいた

 ある年代のクルマ好きにとって、自動車の限界性能を示す指標のひとつとして忘れがたいのが「ゼロヨン」だろう。

 0〜400m加速の略称として生まれたこの指標は、停止状態からフル加速して400m先のゴールラインを切るまでのタイムを競うもの。もともとはアメリカで愛好されている1/4マイルドラッグレースに由来するのだが、1/4マイルというのは正確には402.336mであるため、日本式の0〜400m加速タイムというのは厳密にいえばドラッグレースのタイムより短くなる。

 また、ドラッグレースというのはタイムを競うのではなく、あくまでも同時に走るライバルより速くゴールに到達することが目的の競技であり、クルマの性能を知るための比較としてのゼロヨン計測とは根本的な部分で違いがある。

 そして、20世紀の自動車メディアでは雑誌単位でテストコースを貸し切り、市販車のゼロヨンタイムを計測することが当たり前のように行なわれていた。

 なぜなら、自動車メーカーがゼロヨンタイムを発表することはほとんどなく、メディアが独自に計測する必要があったからだ。20世紀の市販車レベルであれば400m地点でスピードリミッター(国産車で180km/h)が作動することもなく、比較的安全にクルマの限界性能を比較できる方法として誌面を賑やかすことが多かったのだ。

 一方で、ゼロヨンというのは速度無制限のアウトバーンを除くと、ほとんどの国の公道においては速度違反に通じる違法行為となる。世の中でコンプライアンスへの要求が厳しくなる中で自動車メーカーは0〜100km/h加速、0〜60km/h加速、60〜100km/h加速といった指標を用いてパフォーマンスをアピールすることが増えていった。

 そうした背景もあって、雑誌などが独自にゼロヨンタイムを計測して、どのクルマが最速だ! といったコンテンツを作る機会が減っていった。日本のモーターメディアについていえば、バブル崩壊からつづくデフレ傾向によって全体として製作費が厳しい状況になっている。そのため、400mの加速タイムを計るためだけに大枚をはたいてテストコースを借りるという企画を行なうのが難しくなっているというのも、悲しいことだが事実だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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