「偉人」「カリスマ」なんて言葉すらぬるい! 勇退を決めた91歳の「鈴木修会長」の圧倒的な人間力 (1/2ページ)

バイタリティあふれる経営者だった!

 スズキの鈴木修代表取締役会長が、2021年6月の株主総会後に退任して、相談役になることが2月24日に発表された。代表権も返上するだけに、ついにこの日が来たかというのが正直なところだが、42年余りの間、トップを走り続け、自動車業界を代表する人物だし、そもそも御年91歳だ。「忙しくて死ぬヒマもない」と言っていたが、さすがに引き際なのかもしれない。

 実際に会うとオーラがハンパない。モーターショーで他メーカーのブースを回れば、社長以下経営陣が出迎えて案内したり、トヨタイムズの動画では豊田章男社長相手に「レースはやめたほうがいい、監督ならいいけど」と言い放つ。現場主義を徹底的に貫いて、各部署を突然訪問する。「実際は言われるほど来ないですよ」かと思いきや実際に何人かの社員に聞いたのだが、「本当に突然やってきて、どうだ、仕事してるか?」みたいな感じで、さすがに若手には頑張れ程度らしいが、上の人間とはなにやら話し込んで帰っていくとのこと。

 鈴木修氏が生まれたのは昭和5年(1930年)のことで、終戦近くの旧制中学のときに予科練にも入っている。出身地は現在の岐阜県下呂市で、地元東海地方の銀行で働いていたときに、先代の鈴木俊三社長に見出されて、婿養子となっている。ちなみに現在の鈴木俊宏社長は実子だが、修氏までの2~4代目社長は創業家の婿養子だ。まずは下呂がらみの発言を紹介すると「下呂の山奥で育ったから、世界でどんな料理を食べても腹は壊さない」とのこと。最近まで海外出張もこなしていただけに、あながちうそではなさそうだ。

 キャラクターとして強烈かつユーモアにもあふれているのはご存じのとおりで、鈴木氏の名言&迷言をまとめてみると、どんどん出てくる。たくさんありすぎて、1回では紹介しきれないほどだが、経営哲学関係で紹介すると「現場の班長と一緒に1万円のコストの話をする。そうしたら無駄遣いなんてできない」。だから、昨今の接待問題についての意見を聞いてみたくなる。

 根本的なところだと「工場にはカネが落ちている」とズバリ。「他人ではなく自分のコストを削れ」と超厳しい。もちろんコストについてはシビアで、「死に金は一銭たりとも使わない」を信条として、その昔「たとえば、工場内ではなんでもかんでもコンベヤー化しようとしたり、自動化しようとしたりする。その多くは、大いなる無駄。わざわざコンベヤーを設置しなくても、ちょっとラインを傾けて自然と重力で動くようにすればいい。電気やガスなどのエネルギーにはお金がかかるが、重力はタダ」と言い、実際にベルトコンベアを坂にした。

 人物評価については「日本では田舎の人が一番信用できる。ただし、田舎には金がない」となんともだが、社内についても「スズキには高卒で入社して40歳で課長になっているのもいれば、大卒でも課長になっていないのもいる。学歴がすべてじゃない。経営では『勘ピューター』がモノを言う」とのこと。コンピューターよりも勘ピューターとはさすがだ。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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